毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

レゾンデートル

 知念実希人さんの初期の作品で、

この作者さんの話としてはかなり重い方です。

多くの事件がうまく結びついて

グイグイと引っ張られました。

 

【タイトル】

レゾンデートル

 

【作者】

知念実希人

 

【あらすじ・概要】

医師の岬雄貴は、自身がStage4の胃がんに罹患していて

治療の見込みがないことを知る。

 

自分の死が受け入れられない雄貴だったが

絡んできたチンピラに怒りを燃やし

復讐に向けて生きる気力をとり戻す。

 

再びチンピラと対峙した雄貴はもみ合いの末、

相手を殺してしまった。

その現場を見た連続殺人犯「ジャック」は

雄貴を利用することを思いつく。

 

ジャックは「法が裁けなかった悪人」を殺す連続殺人犯で、

巧妙な手口から全く足がついていなかった。

ジャックは雄貴を操作を混乱させるための相棒として使おうとし、

雄貴はジャックとの取引に乗り、新たな殺人を犯していく。

 

雄貴は、ジャックから指示された殺人をこなした帰り道、

暴漢に襲われていた少女沙耶を助ける。

沙耶は自称写真家からペンダントを預かっていたが

このペンダントを巡り写真家と沙耶の親友が殺されていた。

 

沙耶は雄貴のアパートに住み込み共同生活を始めていく。

沙耶はペンダントに隠されたデータを見つけ

親友を殺した犯人を探ろうとする。

 

自らの殺人の意義に疑問を覚えた雄貴は

ジャックの正体を探ろうとする。

既にがんは全身を侵し、体力が落ちている中

雑誌記者から情報を得ながら徐々に真相に迫っていく。

 

【感想・考察】

章立てを「キューブラーの死の受容の5段階」に擬えている。

 

自分の死を受け入れられない「否認」の段階から、

チンピラたちへの「怒り」を生きるエネルギーとする段階へ。

 

死の現実から目を背けるため、連続殺人犯「ジャック」の誘いに乗るが

自らの行為を悔やみ、死の運命は避けられないと「抑うつ」に陥る。

 

笑って死にたいと言っていたかつての師匠の言葉を思い出し

自分を頼る沙耶を守りたいという思いから生の目的を見定め

死を「受容」する。

 

一人の人間が死を受け入れていく物語と

自分の正義をかざし殺人を楽しむジャックの物語と

「これから」 の人生に希望をとり戻していく沙耶の物語が

重層的に重なって深みのあるドラマになっている。

 

知念実希人さんの最初期の作品ということだが

非常にうまくまとまっていて素晴らしい作品だった。

 

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