具体と抽象
抽象化レベルの違いで、見えるものが違ってくることが
具体的な説明でとても分かりやすく書かれています。
まちがいなく一読の価値がある本です。
【タイトル】
具体と抽象
【作者】
細谷功
【あらすじ・概要】
「抽象観念を扱う思考力を高めたい読者」と
「具体レベルだけに生きる人とのコミュニケーションに
苦労している読者」の両方に向けた本。
具体と抽象
具体:
直接目に見える
実体と直結
一つ一つの個別対応
解釈の自由度が低い
応用は効かない
「実務家」の世界
抽象:
目には見えない
実体とは一見乖離している
分類しまとめて対応
解釈の自由度が高い
応用が利く
「学者」の世界
パターン認識
個別の事象をそれぞれ見るのではなく
共通した「法則」を見出し
効率的に考えることを可能にするのが抽象化。
抽象レベルの多重性
「おにぎり」は、梅干しのおにぎり、ツナマヨおにぎりなどを
包括した抽象概念であると同時に、
「たべもの」全体からみると、個別具体的な概念。
抽象レベルは階層構造を持っている。
例えば
①顧客の意見を聞いていては良い製品は作れない
②顧客の声が製品開発の出発点
のふたつは、一見矛盾しているように見える。
しかし、
①は「ボタンが小さい」、「色が見にくい」などの
要求に個別対応しても良い製品生まれない、ということで
「個別要求の裏で顧客が本当に欲していることを見るべき」、
という趣旨であり、
②も「顧客の声を聞き、本当に求めるものを理解して
製品開発につなげる」という趣旨で、本質的には違わない。
一つの言葉をどのレベルの抽象度で受け取るかで、
違った見え方になる。
自由度の違い
「原作小説」と「映画」であれば
抽象度の高い「小説」の方が解釈の自由度が高い。
文章より具体的な映像の方がイメージを固定化する。
また実務面で見ると、
抽象度の高いことがらでは、独自性を出せる反面、
解釈がばらけると、組織として狙った成果が出せない。
業務の上流と下流に求められる抽象度の違い
上流:
抽象度が高い
全体把握が必要
個人の勝負
少人数で対応
創造性重視
多数決は適さない
下流:
具体性が高い
部分への分割
組織力の勝負
多人数で対応
効率性重視
多数決が有効
ベクトル・哲学
具体のレベルでは矛盾しているように見えても
抽象レベルでベクトルがあっていればブレない。
哲学・ビジョンを持つのに大事なのが抽象化能力。
パクリとアナロジー
他の人の作品を具体のレベルで真似るのは「パクリ」
関係性や構造といった抽象レベルで真似るのは「アナロジー」
具体的目標・抽象的目標の実現
具体的目標:
短期的
すぐに行動可能
解釈の自由度が小さい
適用範囲は狭い
結果の是非判断は容易
感情に訴える
抽象的目標:
長期的
行動への翻訳が必要
解釈の自由度が大きい
適用範囲が広い
結果の是非判断が困難
感情に訴えない
抽象→具体の一方通行
高い抽象レベルから具体的なものを見ることはできるが
具体のレベルから抽象概念を見ることはできない。
抽象化を妨げるもの
他人のことを一般化するのは容易だが、
自分の状況は特別に見え、抽象化しにくい。
「一見異なるものの共通点を探す」トレーニングで
抽象化能力は上がっていく。
抽象化だけでは生きにくい
自然現象は個別具体的。
「自分を特別だと思う」ことは抽象化を妨げるが
「自分として生きること」を抽象化が邪魔するとも言える。
抽象化と具体化をセットで考えることが重要。
【感想・考察】
「抽象画」みたいなものは良く分からないが
自然法則をシンプルに現した数式には感動する。
抽象化が好きなのだろう。
抽象的な概念を具体的な情景として描く文学も好きで
そういう文章を書けるようになりたいと思う。
自分が抽象寄りの分、話をする時には、
相手が「具体ー抽象」の多層構造の中で
どのあたりにフォーカスしているのか考えないと
噛み合わなくなってしまうことを意識する必要があると感じた。