屍人荘の殺人 〈屍人荘の殺人〉シリーズ
外部との連絡が絶たれたペンションで起こる連続殺人事件という
まっとうな本格推理小説ですが、
外部との連絡の絶たれ方が斬新だったり
その割に登場人物たちが冷静だったりして、
いろいろと「期待を裏切りまくる」面白さがありました。
【タイトル】
屍人荘の殺人
【作者】
今村昌弘
【あらすじ・概要】
神紅大学の映画研究部は毎年ペンションを借り切って
夏合宿を行っている。
今回は直前になって「今年の生贄は誰だ」という怪文書が届く。
ミステリ愛好会の葉村と明智は同じ大学の美少女探偵 剣崎 と
映画研究部の合宿に同行することになった。
ペンションでバーベキューや肝試しを楽しんでいたが
いきなり外部との交渉が完全に断たれてしまう。
内側から鍵のかかった部屋で不可解な殺され方をした犠牲者。
剣崎たちは謎を解いていく。
【感想・考察】
「密室の連続殺人の謎を解く」という王道の展開だ。
ドアの鍵やエレベーター、内線電話などの舞台装置が使われ
論理的に考えていくと犯人を絞ることができる。
ペンションを周囲から断絶させている状況は斬新だが
登場人物たちはいたって冷静に対処しており、
ペンション内部での「本格推理」の妨げにはなっていない。
そもそも「本格推理」は、独自のルールにのっとたファンタジーだ。
リアリティを追求しながら、現実の問題に切り込む
「社会派ミステリ」という方向に行くこともあれば、
徹底的にファンタジーとして楽しませる方向もあるだろう。
登場人物が多いと把握するのが面倒になるが
極めて分かりやすい名前の付け方をするなど
非常に親切設計になっている。
反リアリティの方向に振り切って、
とにかく楽しませるストーリーとなっている。
ペンションの中の「本格推理」は解決したが
ペンションの外の出来事は未解決のままだった。
そこは続編に期待したい。