毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

最貧困女子

困窮状態にあることが可視化されず

社会から見過ごされてきている「最貧困女子」の

実態をレポートしています。

 

 

【タイトル】

最貧困女子

 

【作者】

鈴木大介

 

【あらすじ・概要】

若い世代の所得が下がり続ける状況で

単に低所得で貧乏なだけでなく、

社会的に困窮している「貧困」層の状況のルポ。

 

・貧困の原因

三つの無縁「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」から

貧困に陥るとしている。

 

「家族の無縁」は貧困家庭であったり、

家庭の崩壊などで、頼れる親族がいないことをいう。

教育の機会にも恵まれないことで稼ぐ力にも影響する。

「地域の無縁」は助けを求められる友人がいないこと。

「制度の無縁」は社会制度の不整備、認知度の低さをさす。

 

また、三つの無縁につながるのが

「精神障害・発達障害・知的障害」の「三つの障害」だ。

安定した就業を不可能にするだけでなく、

友達との関係づくりにマイナスに働いたり、

福祉制度の利用を困難にしたりする。

 

・貧困とプア充

軽度の適応障害があり、孤立しつつバイトで

食いつなぐ「貧困女子」と

「貧困女子」以下の収入しかなくても、

地元の友達と様々なものをシェアしながら

充実した生活を送る「プア充女子」を比較。

 

「同じ所得があっても生活できないのは努力不足」

という指摘があるが、「貧困女子」は周囲との適応が困難で

地域の友達や福祉制度の助力を得ることができず

徹底的な困窮状態にある。

 

・最貧困女子とセックスワーク

路上生活一歩手前の「貧困女子」は家庭からも

福祉制度からも離れてしまっている。

 

家庭からの自立を求めているが、福祉施設では

「親がいるなら親元に返す」ことを原則としているため

嫌悪感を抱いている。

 

適応障害を持ち、家庭からも虐待を受けてきた人たちは

概して「粗暴で面倒くさい」性格になりがちで

地域の友人を得たり、福祉の保護を受けたりすることも難しい。

 

「貧困女子」が求めているものを汲み取り、

セックスワークに絡めとっていく繋がりが存在する。

 

・セックスワークからのパージ

若年層の収入が減少する中で、一般企業に勤める女性が

副業としてセックスワークに携わることも増えてきた。

 

適応障害でコミュニケーション能力に劣る「貧困女子」は

セックスワークの中でも更に底辺に押し込められていく。

 

・彼女たちが求めるもの

貧困女子の可視化、救済のためにいくつかの提言をしている。

 

①家庭に返すのではなく、自立を支援する学童保育

 貧乏や虐待から逃げた子供を無理に親元に返すため

 本当に困難な状況にある子供は学童保育から離れる。

 緊急避難的に食事や宿泊場所を提供し、

 福祉につなぐ学童保育が必要なのではないか。

 

②セックスワークの社会的承認

 セックスワーク就業者の労働条件が過酷で

 最低賃金の定めや、社会保険への加入などを

 義務づけるべきとする。

 とくに未成年者の就業を避けるため、

 福祉につなげられる仕組みを構築すべきだとしている。

 

③恋活

 恋愛による依存は女性の自立を妨げる要素であるが

 貧困脱出の第一歩として精神的安定を得るのに

 「恋愛」が有効だったケースが実例として多い。

 

 

【感想・考察】

作者が取材した女性たちの「貧困」状態は

胸が苦しくなるほど辛い。

 

適応障害で就業もうまくいかず、

手続きをすることができないため

行政に保護を求めることもできない。

 

本当に困窮した状況にある人は声を上げることもできない

という現実を認識すべきだ。

 

「貧困」を無くすためには、マクロで考えれば、

貧富の差の拡大を止める施策が必要なのだろう。

 

手元で考えると、「家庭の縁」「地域の縁」を持てなかった

人々を「制度の縁」がどうやって救っていくかが重要だ。

 

連鎖する貧困から救うためには、

行政が家庭に介入する必要があるのかもしれないが

十分な受け入れ余力もなく家庭から引き剥がす訳にはいかない。

著者の言う「自立の支援」は相当に重い課題だ。

 

セックスワークの合法化も難しい課題だ。

売春が合法化されているオランダでは

セックスワーカーも社会保障が受けられているし

やくざのケツモチではなく、警察が巡回して安全確認をしている。

それ自体は日本の状況よりは Better ではあると思う。

とはいえ、セックスワーク自体の可否や、

就業者の尊厳を考えると「自分の責任で考えるべき」と

突き放すだけでは無責任だとも感じる。

 

重い問題を投げかける本だった。

 

 

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