臨機応答・変問自在 ―森助教授vs理系大学生―
大学講師でもあるミステリ作家の森博嗣氏が
大学の講義で生徒の質問に回答したやりとりをまとめています。
玉石混交の質問と、それに対する「理系っぽい返し」が楽しいです。
森作品の「クールでちょっと斜に構えたセリフ」の
生まれた土壌を垣間見ることができます。
【タイトル】
臨機応答・変問自在 ―森助教授vs理系大学生―
【作者】
森博嗣
【あらすじ・概要】
前書きで教育論を語る。
著者は「高校までは勉強の仕方、道具の使い方を学び
大学以降に道具を使って物を作る段階に入る」と考えている。
与えられた問題に正しく答えることも大事だが
「その問題を作ったのは誰か、
その問題を自分たちに提示している仕組みは何なのか、
という客観を持つことが大事だ」としている。
大事なのは応えることではなく「問う」ことなのだ。
という話から、実際の質問・回答にはかなりの落差があるが
それぞれが面白い。
面白いなと思った質疑をいくつか挙げる。
Q:排気ガスや電気自動車も環境に悪いというが、ではどうすればいいか。
A:人間が移動しない、人間の数を減らすのがエネルギィ問題の解決策。
Q:ツキや流れについて、どう思うか。
A:事後の分析結果に見られる傾向についた名称。
Q:人生とは?その目的とは?
A:死ぬまでにする思考のこと。
「人生は何だろう」と考えるときだけ現れる観念。
「人生には目的がない」ということが重要。
Q:友人が自分の存在価値と目標を見失っている。
A:何かに悩んでいる人は、解決策を知らないのではなく
最良の解決策を面倒でしたくないだけ。
友人には部屋を片付けることを勧めましょう。
Q:ロボットに感情を持たせることは可能か。
A:「感情の定義」、「感情の測定方法」が必要。まねることは可能。
【感想・考察】
かなりふざけた質問が多いが、
森博嗣氏の回答はいちいち面白い。
言葉の定義から問い直してみたり、前提を疑ってみたり、
回答自体ではなく「質問に向かい合う姿勢」で
「科学的である」ことを教えているように思える。
森作品に出てくる「教授」や「博士」たちが思い浮かぶような
質疑応答だった。