遅読家のための読書術
「1冊の本から一つでも得るものがあればいい」という姿勢で、リズム感をもって多読を楽しむことを提唱しています。
たくさん読むための速読術などのテクニックではなく、読書に対する心構えがメインテーマですね。「もっと本を読みたい!」と思う人には有益な本だと思います。
【作者】
印南敦史
【あらすじ・概要】
本を読む姿勢として、 種類にもよるが「実用書などは内容をすべて頭に入れて読もう」とする「ストックの読書」ではなく、「有益な内容を少しでも拾っていこう」という「フローの読書」を勧める。
・フローリーディング
1回の読書で全て記憶できる人はいない。少しでも心に残るものがあればいい。お勉強と思わずに読書を楽しみ、
「たくさんの本から小さなかけらを集めて、大きな塊を作っていく」
・読書の時間
一日の中で決まった時間に本を読むなど、リズムをつける。
小説などストーリーがあるものは速く読んでも意味がないが、実用書などは速く読むこともできる。
また、「1日1冊」を読みきるペースの方が、ゆっくり読むよりも全体感を掴みやすく、長時間かけて熟読するよりも理解が深まることもある。
・記憶に残る読書
呼吸と同じように、吸った後は吐き出す必要がある。
気になったところは覚えようとするのではなく、書き出してしまえばいい。
・1ライン・エッセンス
一冊の本から「価値ある一行」を探しながら読んでいく。さらに一行レビューをしていく。
・テクニック
① 「はじめに」「目次」の活用
「はじめに」の部分を読み、読むべき本かどうかを判断。目次を熟読し、構成を把握していく。
② 最初と最後の五行だけを読む
小見出しを基準に最初と最後の五行ずつだけを読む。論理的な構成であれば「主張→具体的な根拠→主張」となるケースが多いので、中間は飛ばしても大丈夫。
また、作者の自分語りなどにページが割かれることも多いが、その本を選択するかどうかの基準にはなっても、主張自体には影響しないことが多く、飛ばしてしまっていい。
③ キーワードを決めて読む
アウトプットを意識して、欲しい情報を頭に置きながら読むと、キーワードを効率的に見つけることができる。
④ 2つ以上のリズムで読む
1冊の本の中でも、熟読する箇所と流し読みする箇所で緩急をつけた方が、リズミカルに読める。
・本の選び方
読書スケジュールを決める。週6冊を決め、残り1冊はフリーにするなど。そこではマンネリ化を避けるため、週のうち1、2冊は新しい分野の本を読んでみる。
人のおすすめを読んでみたり、本を選ぶ場所を変えてみたりするのも良い。
【感想・考察】
「たくさんの本から小さなかけらを集めて、大きな塊を作っていく」という読み方に強い共感を覚える。
一冊の本の全てを覚えるのではなく、自分の心に響くかけらを集めていく感じが自分の読書の仕方に合う。外部に書き出すことで、覚えなければならないというプレッシャーが薄まるのも事実だ。
本書の著者は、読書中にラインを引いたりすることを勧めていないが、私の読み方もそれに近い。読書ペースを乱さないようライン引きなどはせず、Kindle上でしおりを置くだけで、後から参照箇所を探すのがやりやすい。
著者の意見にほぼ全面的に賛成で、読書に向かう姿勢などは自分の読み方と非常に近かった。
ただ私の場合は紙の本は入手しにくく、ほぼ100%が電子書籍でなので環境には違いがある。そのためテクニック面ではそのまま使えない部分も多かった。
例えば「本はリニアに読むだけではない」とあったが、電子書籍でページを前後するのは結構面倒くさい。検索性は高いので、リニアに読み切ってから、後で調べる感じになる。
また本の処分についていえば、電子書籍の場合捨てる必要はほとんどない。ただインデックスの一覧性は低いので、電子書籍特有の整理方法を工夫する必要があると思う。例えば紙の本であれば「積読本」は物理的に目立つが、電子書籍では埋もれて再発見されることはあまりない。
面白い本をもっとたくさん読みたい。本書の使える部分を有効活用していきたい。
【オススメ度】
★★★☆☆