破天荒フェニックス オンデーズ再生物語
大幅な債務超過に陥ったメガネ小売チェーン「オンデーズ」を買収し、復活させるまでの道のりを描いた、ノンフィクション風ビジネス小説です。 爽快で心が動かされる物語でした。
【作者】
田中修治
【あらすじ・概要】
20億円の年商で17億円の借金を抱え、大幅な債務超過状態に陥っていたメガネの小売りチェーン「オンデーズ」。支援者の仲介を行っていた田中氏は再生計画を考えるうちに、この会社の可能性を感じ自ら買収に乗り出す。
財務面で支援していた奥野氏は、破綻目前の会社への関与を止めようとするが、田中氏の熱意に押され、結局一緒に参画することとなる。
急に乗り込んできた「若くてチャラい」経営者に対する反感で社内の統一が取れずに苦しむ。外部的にも銀行からの追加融資が一切得られない中、何度も資金ショート直前まで追い込まれる。さらに、田中氏のコンセプトを詰め込んだ新店舗での失敗や、財務状況改善を期待して買収した雑貨店での失敗で、ギリギリまで追いつめられる。
その後、「新店舗オープン時の半額セール」、「スリープライスからブランドライン毎の柔軟な値付けへの以降」、「独自性のある高付加価値商品の投入」といった施策が当たり、利益状況が徐々に改善してくる。利益率低下を懸念したフランチャイズオーナーから反発されながらも導入した「薄型レンズへの追加料金廃止」も成功し増収増益となった。
国内トップとの差が詰まらないことを感じた田中氏は、シンガポールへの出店を決め海外に成長余地を求める。いまだ債務超過の状態で追加融資が得られず資金繰りが厳しい中、シンガポールと台湾でも積極的な出店攻勢をかけ売り上げを拡大していく。
【感想・考察】
田中氏の「前のめりに突っ込んでいく」闘い方が爽快だ。
ビジネスでは、日々の選択で「結果的に勝てた」人が生き残るので、「成功者」の本では、その選択がいかに合理的であったかを語るケースも多い。
ただ実際のビジネスは様々な要因が複雑に絡み、判断に対する結果は毎回違ってくる。特に人の感情は大きな影響を持つが、そこを再現性のある方程式で示すことは不可能だろう。
本書のように個別具体的な事象や関係者の心情をストーリーに乗せる「小説」は、抽象化された教訓よりも、ある意味で「よりリアル」である言える。
個別の判断の是非は「状況による」としか言えないが、「選択肢の是非はともかく、選択することから逃げずに挑戦していく姿勢」であるとか、「圧倒的な熱量が周囲を巻き込んでいくという傾向」などが、この物語から強く伝わってきた。
本書は純粋なノンフィクションではなく、物語として色付けされている。例えば登場する会社も、好意的だった「三井住友銀行」などは実名だが、態度の悪かった銀行は「穂積銀行」などと原形が分からないように加工されている。それでも、全体として「リアル」を強く感じる。
非常に面白い。
【オススメ度】
★★★★☆