怪物少女フォーエヴァー
新潟を舞台とした四季の物語のうち、春と夏の2編を収めた短編集です。前作のピーカブー!に続いて、ほんのり怖いけど楽しい話になっています。
【作者】
ヤマダマコト
【あらすじ・概要】
新潟の四季の物語のうち、春と夏の2編からなる短編集。
・ほうき星に触れるころ(1986)
ハレー彗星が近づく1986年の初春、新潟県職員の「俺」は、田舎町に転勤となりそこで働いていた。その町では前回76年前のハレー彗星接近時に「ほうき星の尾に地球触れる5分間は呼吸を止めないと死ぬ」というデマが広がり、空気をためるタイヤチューブの争奪で集落の半数が死ぬような大惨事があったという。
彗星最接近の数日前、望遠鏡を眺めていた「俺」は叫び声を聞き、幼女と食いちぎられた犬を見つける。「俺」と、自らを「災い」だという幼女マスミとの奇妙な共同生活が始まる。
・鳥葬
カラスと意思疎通することができる唯人は、初老の石川のパートナーとして共に全国を回り「仕事」をしていた。
新潟の海沿いの街を訪れた二人はそこで仕事をする。唯人はそこで出会った同年代の少女ヨシノと友達になり、サッカーをして遊ぶようになっていた。
ある日、ヨシノが飼っていたハムスターのチビが殺され、唯人はその力でハムスターに仮初めの命を吹き込む。
【感想・考察】
「山彦」などでも、この作者の独特な「死生観」が感じられたが、本書の2作品にも色濃く出ていた。
春の話「ほうき星に触れるころ」では、ハレー彗星の「母」から一時的に切り離されたマスミが、母の元に帰るまでの時間に「個」としての独自性を持ち始める。人がそれぞれに持つ「心」を尊重しながら、「魂」は大きな流れのようにつながっているという感覚が読み取れる。
夏の話「鳥葬」でも、「肉体」を徹底して即物的に扱うことで、「心」や「霊魂」の存在を際立たせている。
この作者の作品に共通する乾いた雰囲気のベースには、こういう死生観があるのだと思う。
【オススメ度】
★★★★☆
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