カチコミ山
お婆さんを殺され失意に沈むお爺さんのため、ウサギがタヌキに復讐するという、「かちかち山」をモチーフにしたお話です。童話ベースですが「正義とは」何か、を問いかけるハードボイルドな作品です。
【作者】
芥川龍之助平、月狂四郎
【あらすじ・概要】
事業に失敗し借金を抱えたお爺さんは一時期路頭に迷ったが、お婆さんに支えられながら、大麻の栽培で生活を取り戻した。
大麻畑の侵入を防止する罠にはまった「ウサギ」はお婆さんに助けられ、その後老夫婦を助けながら一緒に暮らしてきた。
「タヌキ」と呼ばれる泥棒が大麻畑への侵入を繰り返し、作物を荒らしていた。罠にはまり捉えられたが、縄から抜け出しお婆さんを殺し「婆汁」にする。お爺さんは失意に沈み、お婆さんを守れなかったウサギはタヌキへの復讐を誓う。
高級住宅街にあるタヌキに家に10tトラックでカチコミをかけるウサギ。機関銃とグレネードで護衛や家族を殺しながらタヌキを探す。地価の駐車場でタヌキと対峙したウサギは、タヌキから「お前のしてきたことと私のしたことと何が違うのか」と問いかけられる。
【感想・考察】
日本の昔話の中でも、特に「勧善懲悪」が前面に出ている「かちかち山」を素材に、「善悪とは何か」を問い、「正義」に突き動かされる危うさを説いている。
かちかち山はオリジナルでも「婆汁」が出てきたり、子供向けにしては凄惨な内容で、その分だけ復讐が正当化される感じはあった。とはいえ「悪い人は報いを受けました。めでたしめでたし」という素朴な受け取り方をする人はそれほど多くないだろうとも思う。
ある意味「正義は相対的なもの」、「自分が正しいと思い行動するのは危険」だといことは当然だろう。「では、何に向かって生きればいいのか」を作者なりに追い求めた作品を読みたいと思う。
【オススメ度】
★☆☆☆☆