新版 論文の教室 レポートから卒論まで
大学生がレポートを書いたり、卒業論文を書いたりするときに役に立つレベルの、論文の書き方の本です。
文章を書くのが下手な、ヘタ夫くんに大学の教員が指導していく形で進みます。ノリの良い対話形式で読んでいて楽しいのですが、内容はきちんとしています。大学生以外でも論文を読んだり、論理的な文章を書こうとするひとには役に立つ本だと思います。
【作者】
戸田山和久
【あらすじ・概要】
ヘタ夫の「ダメ論文」を修正しながら、論文の基本やテクニックを紹介していく。
・論文は「問い・主張・論証」で構成される
何について論じるのか明確な問いを立て、はぐらかすことなく自分の考えを主張し、その主張を検証可能な形で論証してく。それ以外のことを書いてはいけない。
・論文の構成要素は5つ
論文には定型がある。定型に従って書けば論文っぽく見える。
① タイトル
「この論文を読むと何がわかるようになるのか」をタイトルにする。
② アブストラクト
論文の目的、結論、論の展開にについて要約したものを冒頭に記す。
③ 本体
1. 問題提起、問題の分析と定式化
2. 主張
3. 論証
内容に応じて順番は変更してもよい。
問題提起→結論→論証 :「こう思います。何故なら〜だから」型
問題提起→論証→結論:「色々考えたら〜でした」型
問題提起→論証(先行研究の批判)→結論→論証:「そーじゃなくこーだ」型
④ まとめ
もう一度わかったことを一言でまとめる。
⑤ 注・引用・参考文献
他論文の剽窃は最低の行為と取られる。参考にした文献を明示することで論証が客観的になる。
・論証のテクニック
例外のない論証、演繹的な論証、帰納的な論証、仮説的演繹、対立仮説など
論理学の基本を説明。
・パラグラフライティング
一つのパラグラフでは一つのことと、その補足説明や言い換えなどだけを述べる。
接続詞などで前後のパグラフの関係を明確にする。
【感想・考察】
論文に限らず、論理的に何かを伝えたいとき、「問い・主張・論証」という形を取るのは有効だ。普段の会話が理屈っぽいのはよくないが、報告などをわかりやすくするテクニックとして、アウトラインから広げていく書き方や、パラグラフごとの論理構成の仕方も有益。なかなか有益な本だと思う。
また、ヘタ夫の論文例として出てきた「動物に権利は認めらるか」という話は興味深い。権利とは何か、権利の主体と認められる条件は何かなど考えてしまい、読破するの2時間がかかってしまった。
【オススメ度】
★★★☆☆