風ヶ丘五十円玉祭りの謎
5編(+1つのおまけ)の連作短編推理小説です。
殺人のようなシリアスな犯罪が起きることもなく気軽な雰囲気です。それでも、探偵役である裏染の観察の鋭さや密室トリックのぶっ飛び方など、本格推理小説として楽しめました。
【作者】
青崎 有吾
【あらすじ・概要】
・もう一色選べる丼
学食の外に食べ残しのある食器が放置されていた。
持ち出した食器を返却しないことに怒る学食のおばちゃんは、犯人特定に食券20枚の懸賞を出す。懸賞につられた裏染は推理に乗り出すが、「気持ちは分かるけれど、やり方が気に入らない」と言う。
・風ヶ丘五十円玉祭りの謎
風ヶ丘の神社で行われる夏祭りが舞台。
祭りの運営委員を名乗る人が「ご縁があるように」という趣旨で、お釣りに50円玉を使うことを推奨する。裏染の妹である鏡華は、財布を重たくしてすりを防ぐためだと推理するが、裏染は別の目的を見出す。
・針宮理恵子のサードインパクト
不器用に生きる針宮理恵子は後輩の早乙女と付き合い始めていた。
早乙女は夏休み期間中、吹奏楽部でクラリネットパート唯一の男である早乙女は、練習中に飲み物を買いに行かされ、練習室に戻ると鍵をかけられ締め出されることを繰り返していた。
早乙女がいじめられていると感じた理恵子は感情を爆発させるが、状況をみた裏染は原因をつかみ、あっさりと問題を解決する。
・天使たちの残暑見舞い
5年前に卒業した演劇部OBのメモに、不思議な出来事が記されていた。
教室で二人の女子生徒が抱き合っていて、慌てて目をそらしたが、数分後にもう一度見てみると二人とも姿を消していた。出入口は自分のいた場所だけで、教室内に隠れる場所もない。出入りできるのは窓だけだが、教室は3階で掴まって降りれるようなものもない。
裏染は「その日に特別に起こったこと」に気づき、密室消失事件の真相を知る。
・その花瓶にご注意を
この話では裏染の妹、鏡華が主人公。
鏡華がいた教室の外の廊下で、音もたてずに花瓶が割れていた。花瓶を割った犯人は何を隠そうとしていたのか。
【感想・考察】
読んだ時期のせいかもしれないが「夏の終わりの切なさ」が強く感じられる。
以前読んだ「体育館の殺人」もそうだが、学校生活の詳細な描写がノスタルジックな雰囲気を出している。この短編集は長編小説のサイドストーリー的な感じで、他の長編作品も読みたくなった。
【オススメ度】
★★★