毎日一冊! Kennie の読書日記

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天空の矢はどこへ? Where is the Sky Arrow?

 「血か、死か、無か」に続くWシリーズの9作目です。ミステリ作家の作品ですが、謎解きに重点の置かれたシリーズではありません。「人工知能や生命工学が進歩した世界はこういう風になるのかなあ」というSF的空想を楽しむものなのだと思います。

 完全に理系よりの理屈っぽい話なんですが、登場人物たちの抑制のきいた洒脱な会話が素晴らしいく、この作者独自の雰囲気に巻き込まれてしまいます。

 

【作者】

 森博嗣 

 

【あらすじ・概要】

 人がほぼ死ななくなった替わりにほぼ生殖能力を失い、人間とほぼ区別がつかないウォーカロンと呼ばれる人造人間が人間と共に暮らし、人工知能が人類を超え個性を持ち始めている、今から数百年後の世界が舞台。

 前作までと同じく、ウォーカロンと人間違いを判定する機器を開発していたハギリ博士の視点で、情報局に所属するウグイ、キガタ達とともに事件を追っていく。

 カイロ行きの飛行機が行方不明になったという情報の直後、ウォーカロンメーカであるイシカワの地下工場で暴動事件が発生した。

 警察隊が突入すると酸欠で数千人の人間とウォーカロンが倒れていた。ハギリたちの調査で、工場のメインコンピュータからはほぼ全ての記録が失われていたことが分かる。

 

 【感想・考察】

 合理的な思考を極める人工知能が「地球を離れ月に行きたい」という「欲求」を持つ描写がある。

 森氏は初期の作品でも「思考の飛躍に価値がある」としたり、Wシリーズでも「人間が生まれなくなったのはエラーがなくなったから、エラーこそが生殖の源泉」だという設定を持ち込み、エラーやそれによる飛躍がエネルギーだという見方をしている。

 今後人工知能が更に性能を上げていくのは間違いないが、エラーによる揺らぎに積極的な価値を見出して、その仕組みを取り入れていくようになれば、より生命に近いものになるのだろうか。

 

 【オススメ度】

  ★★★

 

 

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