最後は臼が笑う
【作者】
森絵都
【あらすじ・概要】
ダメ男、クズ男にばかり惹かれてしまう桜子。「どんなに悪い男にも柔らかいところがある、それが愛おしい」、「善なるものは遠くから見ても近づいても変わらないが、悪は距離や角度によって様々な表情を見せる」とダメ男の魅力を語る。
そんな桜子が「一片も好きになれない純粋な悪を見つけた」と言う。電車で年寄りではないが若くはない女性に席を譲り、相手の困惑を見て楽しむ男。自分の欲望を追うのではなく弱さを隠すのでもなく、相手を不快にさせることを純粋に楽しむ気味の悪さ。
「クズ」を愛する女と「純粋悪」男の対決が始まる。
【感想・考察】
善なるものもよく見ればデコボコだろう。ダメ男が好きな女性は「ダメ」な部分への感受性が強いということだろうか。世の中には色々な男女がいて、それぞれが違う目で世界を見ているということなのだろう。モヤモヤした気持ち悪さがあるが、最後は「臼」と称されたおばさんのパワーで振り切ってしまうのが爽快だ。
電車で席を譲るのがちょっと怖くなる本。