毎日一冊! Kennie の読書日記

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自由論

【作者】

  ジョン・スチュワート・ミル

 

【あらすじ・概要】

  19世紀初めのロンドンに生まれた功利主義哲学者による著作。功利主義的観点から自由論を語る。

 

 ポイントとなるのは以下の二つ。

・「個人は、自分の行動が自分以外の誰の利害にも関係しないかぎり、社会に対して責任を負わない。他の人々は自分たちにとって良いことだと思えば、彼に向かって忠告したり教え諭したり説得したり、さらには敬遠することができる。彼の行動に嫌悪や非難を表明したくても、社会はこれ以外の方法を用いてはならない」

・「個人は、他の人々が利益を損なうような行動をとったならば、社会に対して責任を負う。そして、社会を守るためには社会による制裁か、もしくは法による制裁が必要と社会が判断すれば、その人はどちらかの制裁をうけることなる」

 この二つを公理として、いかにバランスをとるかを語る。

例えば、「他人に迷惑をかけない限り、麻薬や賭け事を禁止すべきではないのか」、など現代でも討議されるような限界例を語る。ベンサムの功利主義論では、「父権的干渉」として人々が愚かな行為で自らを不幸にすることがないよう干渉することを認める方向に寄りがちだが、一方でミルは、自らが幸福を追求する「個性」を発展させることを提唱する。その上で、私的領域と公的領域を厳密に区分することを提唱し、例えば「賭け事で堕落した生活をするのは私的領域だが、子供の養育に障害が出るなら公的領域だし、賭博を開帳するのも公的領域」というように考える。

 

 「思想・言論の自由」についても功利主義的な観点から必要性を語る。

・発表を封じられることで真理が見つからないかもしれない。

・間違った意見だとしても部分的な真理を含んでいる可能性がある。

・世間一般で受け入れられる意見も活発な議論がなければ、大多数の人は合理的な根拠を知ることがなく、確信を持つことができなくなる。

 というように、利があるので「思想・言論の自由」は尊重すべきという立場。

 

 また、官僚組織が強すぎることにも警戒している。活発な意見のぶつかり合いがないところは停滞腐敗していくという考えから、官僚組織の外にも優秀な人材を配置し、相互が切磋琢磨していくような政治体制を理想としている、

 

【感想・考察】

 議会制民主主義が成立し、多数派による数の暴力が現実的問題となった時期の著作だからだと思うが、少数意見が封殺され「衆愚的」な 体制に陥ることに対して警鐘を鳴らしている。また、プロテスタントのキリスト教的道徳観が通底しているが、とはいえ盲信・盲従すべきではないと語る。

 おそらくミルが本作を著した時期よりも、現代の方が交通・通信が発達し、世界規模での平準化・没個性化が進んでいると思われる。また、優秀な知性の一極集中も歯止めなく進展している。「個性」のぶつかり合いが大事、間違った意見でも多様性には価値がある、という考え方は現代でも生きるのだと感じる。

 

 

 

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