桜の森の満開の下
【作者】
坂口安吾
【あらすじ・概要】
男は屈強な山賊だ、人気のない時に見る満開の桜には気が狂いそうになるような恐ろしさを覚える。
ある日男は桜の元を通りがかった夫婦を襲い女を連れ去り妻とした。女は他に数人いた山賊の妻たちを男に殺させ、生活を始めた。山以外での生活を知らない男には理解できないが、女は田舎暮らしを嫌がり都の文物を欲しがった。男は都の人を襲いものを奪ったが女は飽き足らず、結局二人は都に出る。
都では男が強盗で生計を立てていたが、女は男が持ち帰る戦利品の中でも被害者の「生首」を特に喜んだ。人形で「ままごと」をするように、生首を使って「首遊び」をする女は都での生活に満足していたが、男は都会での生活に疲れ、永遠に終わらない日常を倦み、山へ帰りたいという思いを募らせていった。
ある日男は女と離れ山に戻ることを決意するが、女は「男と離れるのは辛い、それなら私も山に戻る」と言い一緒に山に帰ることとした。
男は桜が満開となる時期を選び戻ることとした。満開の桜の下で男は女に手をかけ、女も男自身も桜の花びらとなって消えてしまった。
【感想・考察】
人気がない夜の桜は確かに恐ろしい。何かに吸い込まれるような感覚がある。この作品では鮮烈なイメージで満開の桜の白々しさが伝わってくる。あっさりとした書き方だが、女の狂気と男の孤独がとても寒々しくて深く印象に残る。
「桜の下」が様々な作品のモチーフとなることの原型というべき作品だと思う。一度は読んで見る価値がある。