黒猫の小夜曲
【作者】
知念 実希人
【あらすじ・概要】
”優しい死神の飼い方” に続く死神シリーズ。前作の主人公である”レオ”と同僚の”高次な霊的存在” である道案内役が、猫の”クロ”となって未練を残して死んだ人々の魂を導いていく。
死に際の”記憶をなくした” 地縛霊が、昏睡状態にある女性の体に入り込み、クロの仕事を助けながら、自らの記憶を取り戻そうとするところから話は始まる。
最初の章ではうまく心を通わすことができなかった老夫婦を救う話から入り、捜査途中で未練を残して世を去った刑事の話から、主人公たちを巻き込んだ事件の全貌が徐々に見えてくる。
【感想・考察】
前作と比べて、ミステリー色が濃いが、主人公たちの交流が優しく描かれ、同じように心があたたくなる作品。登場人物がそれぞれ誠実に生き、自分以外の誰かを心から大切に思う姿がとても美しい。前作の死神”レオ”も、今作の”クロ”も 最初は”感情という不合理なものに振り回される理解不能な生き物” と人間を見ていたが、不合理で儚い人間に惹かれていくが、同時に読者としても改めて人間に惹かれている。
良作だと思う。