この国のかたち(2)
【作者】
司馬 遼太郎
【あらすじ・概要】
全巻と同じく、歴史上の考察をいくつかの切り口から、作者自身の圧倒的な知識量と考察力から解説していく本。
まず印象に残ったのは天領と藩領の話。幕府直轄領である天領は、ほとんどの藩領よりは税率が低かった。中央集権的な大勢でありながら、実態として特に軍事力などの面では地方の諸藩に力があったという見方。天領の住民の財政的余裕が濃厚な文化を醸成してきただろうということや、その後の日本の行政体制にも影響しているだろうことが述べられている。
また、婚姻に関する話として、儒教の影響が圧倒的に強い韓国では同性婚が厳しく禁じられていて、中国でもやや緩やかではあるが同様。中国の唐代に日本で大宝律令が編まれたが、道教や宦官の制度は導入されず、同性不婚も入れられなかった。似たような文化圏ではあるが、結婚一つ取っても違いがあるという話。
さらに13世紀ごろの文章語の話。日本の文章語は詩歌の分野から発達し始めたが、論理的な文章を書くのには適さず、公文書には漢文が使われていた。親鸞の「歎異抄」が明晰な文章の例としてあげられていた。
【感想・考察】
小説でもエッセイでも同様だが、この作者が ”話はそれるが” や ”本筋から外れるが” などと言って触れる雑学がどれも面白い。雑多な話をばらばらにしているようだが、多くの著作や雑記に触れることで作者の歴史への見方が徐々に浸透してくる。歴史をもっと学びたいと思わせる本。