『依存』 西澤保彦
構成力が凄まじい作品でした。
本筋と無関係に見えるエピソードが挟まれ、それぞれを「純粋な論理パズル」として推理されていくのだけれど、そこで浮き上がったテーマが、それぞれラストに繋がるピースとなっています。「立場を変えて見えてくる共依存」「防衛機制としての記憶改竄」「人間関係における客観性の曖昧さ」などなど。
そして、人間の「業」の恐ろしさに慄くラストでの、鮮やかな切り返しが素晴らしい。
いやあ、すごい作品です。
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『悪魔を憐れむ』 西澤保彦
「タック&タカチ」シリーズの短編集。
彼らが大学を卒業した後、それぞれの道を歩んでいく中で遭遇した事件を描く、4つの短編集です。
どの話も「なぜそうしたの?」を問うワイダニットなのですが、その理由に「人間の業」が感じられます。
とくに表題作の『悪魔を憐れむ』は強烈。
「善意で人をコントロールする人」への嫌悪感は、西澤さんの作品のベースに流れるテーマだけれど、本作では「悪意で人をコントロールする人」との対比で「やっぱ善意の人間の方がたちが悪い」と感じさせてきます。
「正しい」という思いが外側に向くと人を傷つける。
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『超筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超科学的な理由』 Testosterone、久保孝史、福島モンタ
「死にたい」から「殺すぞ」へ。
筋トレで、健康になり、異性にモテて、仕事ができるようになり、アンチエイジングを果たし、メンタルが安定し、ダイエットに成功し、自信をつけよう!
という、ひたすら「筋トレ推し」の本です。
「科学的に実証」しようとして全然科学的じゃないんだけど、勢いがあってとにかくモチベーションが上がる。
うん、筋トレしてみよう!
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『冤罪者』折原一
連続殺人事件を追うノンフィクション作家の婚約者が殺された。
無期懲役の判決受けた「犯人」 は、自白を強要されたとして無罪を主張する。
折原一さんの作品ということで「叙述トリック」アリなのは、織り込み済みで読みました。人物の同一性とか、時間軸とか、どこかに「だまし」があると思うから、全員が怪しく見えてきます。緊張して読むので疲れますね。。
本書のタイトルは、日本語で「冤罪者」、英語で「STALKER(ストーカー)」です。
「ストーカー」の方は、ストーリーを凝縮している感じです。
誰もが怪しく見える中で、ストーカー的に迫ってくる真犯人の恐ろしさが、一つの醍醐味でした。
もう一つ「冤罪者」の方は、本書が読者に投げかけるテーマなのだと思います。冤罪は人を不幸にする、とはいえ「疑わしきは罰せず」では警察は機能しない。
一人の人間を通して、冤罪にまつわる両面を示して問題提起をしています。
考えさせられる内容でした。
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『仔羊たちの聖夜』 西澤保彦
タック、タカチ たちの本格推理シリーズです。
時系列的には第3段なのかな。
一年前のクリスマスイブ、マンションから飛び降りた女性のプレゼントが、タカチたちの持ち物に紛れ込んでいた。
プレゼントを遺族に返そうと調べていると、5年前のクリスマスイブにも、高校生が同じ場所で死んでいたことがわかる。
そして今年の同じ時期、タカチたちの知り合いである大学講師も、同じ場所から飛び降りた。
3つの事件に関係はあるのか。
善意である分たちの悪い「独善的支配」が、人を壊していく様をグロテスクに描く作品でした。一方で、タカチが「自立した友人」たちに囲まれ、心の傷を回復していくのが「救い」でした。
時系列的には後になる「スコッチ・ゲーム」と合わせて読むと、より深く作者のメッセージが理解できます。
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『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』 リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット
2007年に先進国で生まれた子供は、半数以上が100歳を超えて生きる。
「人生100年時代」に突入し、「学校で学習・会社で仕事・老後」の3ステージ構成が機能しなくなった現代、新しい考え方と行動が必要だと提言する本です。
ざっくりまとめると、
「より長く、ご機嫌に働こうぜ!」という内容。
個人的な本音をいうと、
「そんなにずっと働きたくない。。。」のですが。
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『推し、燃ゆ』 宇佐見りん
主人公の あかりは、自分にとっては「完全に普通の人」でした。
とりとめのない一人称視点の文章が「発達障害」っぽい感じを出しているけれど、自分の思考も、これくらいの「とっ散らかり方」だし、学校やバイト先での「コミュニケーション」のしずらさも「全然普通」でした。
一方で、あかりが「推し」について発信するときは、割と冷静に整理された文章を書く。
「熱意を持てる対象」に「ゆっくり時間をとって向き合える」なら、集中力を維持してまとまったアウトプットも出せています。
自分と変わらないじゃん。
ああ、なるほど、そういうことか。
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