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『出雲のあやかしホテルに就職します』 硝子町玻璃

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妖怪も神様も人間も分け隔てなくもてなす『ホテル櫻葉』

こういう自然観がしっくりくるのは、日本人だからだろうか。。

 

 

タイトル:出雲のあやかしホテルに就職します

作者  :硝子町玻璃

オススメ度

 八百万の神たち  ★★★★☆

 霊能力者たち   ★★★☆☆

 ラブコメ     ★★★★☆

 総合オススメ度  ★★★★☆

 

あらすじ

幽霊や妖怪などを見ることができる 時町見初が、幽霊も神様も妖怪も人間も分け隔てなく受け入れる「ホテル櫻葉」で働き始めた。

 

第1話:霊感娘と就職

時町見初が志望した会社は、時町が訪れた後に必ず不祥事などが発生していた。見初はなかなか就職先が決まらず苦戦していた。

そんなある日、見初は自分に憑いていた幽霊が、自分からの思いを受け入れることで成仏した様を見届けた。その場面を見ていた『ホテル櫻葉』のリクルート担当椿木冬緒は、偶然を装って見初に接近し丸め込んで『ホテル櫻葉』への就職をなし崩し的に決めさせた。

 

第2話:ホテル櫻葉

見初は出雲にある『ホテル櫻葉』に向かう。設立者である櫻葉悠乃の遺志にしたがい、このホテルでは妖怪も人間も神様でも、分け隔てなく受け入れていた。

設立者の孫である櫻葉永遠子を始め、個性的なスタッフたちに囲まれ、冬緒の指導を受けながらベルガールとして働き始める。

永遠子は、祖母の遺志を守りたいと思いながらも、ホテル経営が上手くいかないことに苦悩していた。

 

第3話:冬緒と白陽

冬緒の生家である椿木家は、有名な陰陽師の一族だった。

かつて冬緒は初めて妖怪狩りに同行し、親たちは治癒能力を持つ白陽という兎の妖怪を追い詰めていた。冬緒は痛めつけられる白陽を思わずかばってしまう。白陽は逃げ出したが、重傷を負っていたためどこかで死んだものとみなされた。その出来事で一族からは陰陽師失格の烙印を受けてしまう。

いま冬緒は、陰陽師となることもできず、白陽を助けることもできなかった自分を不甲斐なく思っていた。

 

 

第4話:比良と桃山

かつて男に弄ばれた数百人の遊女の思いが集まり、比良という妖怪が生まれた。

男性すべて恨みを持つ比良は数十人の男を殺してきたが、ホテル櫻葉の料理人である桃山から、甘い菓子をもらい、いつしかお互いに心惹かれていった。

しかし、比良は自分が近くにいることで、人間である桃山の生命力を奪っていることを自覚し、桃山に妖怪が見えなくなる呪いをかけて、彼の元を離れていった。

それ以降、男を殺すことがなくなった比良は徐々に力を失っていった。最期に桃山の姿を見たいと思った比良はホテル櫻葉を訪れたが、そこには比良を消そうとする陰陽師が待ち受けていた。

 

 

感想・考察

最初はマンガ的なラブコメという印象で、正直好みじゃないかと思ったが、実際とても面白かった。

 

ホテル櫻葉には「妖怪でも、人間でも、神様でも、幽霊でも、分け隔てなくもてなす」という理念があるが、この作品自体も、妖怪や神様を特別視することなく、人間と同列に描写されている。

 

こういう「何でも擬人化」の精神は、日本を始めとした東アジアで通底しているように思われる。道教的な八百万のアニミズムなのだろう。

自然も神様も完璧なものではなく、時に機嫌を損ねたり間違いを犯したりしながら、人間との共存関係を築いていく。

こういう感性は素直に同調できるので、作品世界が快適に感じられる。

 

ここ数年欧州で暮らし、日本や中国にいた時と感覚の違いを感じることも多い。欧州では「自然は対峙し克服すべき障害だ」と捉えている部分があるのではないか。

特に今住んでいるオランダは、国土の大半が海抜以下だ。自然と闘うことで国土を作り出してきたという自負があるのだろう。「人間」対「自然」という二項対立を感じる。生活に自然を取り入れようとはしていて公園なども多いが、どこか人工的で違和感のある自然だと思える。

 

ちょっと、日本に帰りたくなってきた。 

 

 

 

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