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『生業としての小説家戦略 専業作家として一生食っていくための「稼げる」マニュアル54』 わかつき ひかる

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「小説執筆ノウハウ」じゃありません。

著者の経験したトラブルを語るおもしろエッセイ!!

 

 

 

タイトル : 生業としての小説家戦略 専業作家として一生食っていくための「稼げる」マニュアル54

作者   : わかつき ひかる

オススメ度

 おもしろさ    ★★★★☆

 出版業界情報   ★★★☆☆

 役立ち度     ★★☆☆☆

 総合オススメ度  ★★★☆☆

 

要約

「お金」や「契約」周りで、著者が経験してきたトラブルとその解決法を語るエッセイ集。

  • 未払いとの戦い

わかつき氏自身の経験で、簡易裁判所に提訴した経緯を語る。

出版社によっては作家への支払の優先順位が低く、資金繰りが悪いと後回しにされる。支払予定日に則入金確認し、未払いには毅然とした態度で臨むことが大事。

 

 

わかつき氏の場合、未払いは20数万円で、普通泣き寝入りしてしまうレベルだが、理不尽に負けず簡易裁判所に控訴した。

60万円以下の金銭支払いを求める場合、簡易裁判所で「低額訴訟手続き」を行うことができる。自分で訴状を用意することで費用を抑えられる。原則即日結審で強瀬執行を行うこともできる。

 

裁判では和解が成立し、実質的にわかつき氏の勝訴となった。ただ損害遅延金の請求は漏れていた。

 

  • 契約書の確認ポイント

機密保持契約を結ぶ場合、片務契約(作家の側だけが義務を負う)は要注意。情報開示の範囲が明確でないと、何も言えなくなる可能性がある。

所轄裁判所で例えば「東京地方裁判所」などと指定されていると、地方在住者には不利になる。指定は外してもらった方がいい。

 

  • 編集者との相性

熱意をもって作品を良くしよう、もっと売れるようにしようとする編集者もいるが、パワハラまがいに自分のやり方を押し付けてくる編集者もいる。相性が合わず筆を折るくらいなら、逃げてしまった方がいい。ある程度売れてくればフリーの編集者を雇い間に挟むという方法もある。

 

  • 編集者が作家を放置する理由

一人の編集者は数十人の作家を担当している。自分の優先順位が低いことは覚悟しなければいけない。信じるべきは編集者ではなく自分。売れるためには作品を出し続けることが大切。

 

  • 著作権

感想・考察

作家になるため、小説を書くためのノウハウもの、だと思って読んだら全く違った。わかつき氏が経験してきたトラブルに関するお話。

現役の作家さんや作家になろうとしている人には有益な情報だろう。作家でなくても小規模な個人事業主にも有益かもしれない。

 

契約上は対等な立場で「主張すべきことは譲るべきではない」のだろうが、実際に売り込む立場だと「面倒なことを言うやつ」と思われるのを恐れ、無条件で受け入れてしまう人も多いだろう。

「理不尽なことは認めない」という、わかつき氏の妥協しない姿勢は素晴らしいと思う。自分の作品に自信があるのか、自分を安売りしてはいけないという矜持があるのか。

 

そして何よりも、本作は読み物として純粋に面白い。

下劣な出版社のやり口を暴露したり、作者のぶっ飛んだ戦い方が、面白おかしく書かれている。やっぱり売れる作家さんの筆力は凄い。。

 

 

 

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