『飲茶の「最強!」のニーチェ』 飲茶
世界中に定められたどんな記念日なんかより
あなたが生きている今日はどんなに素晴らしいだろう
タイトル : 飲茶の「最強!」のニーチェ
作者 : 飲茶
オススメ度
分かりやすさ ★★★★★
おもしろさ ★★★★☆
哲学への扉 ★★★★☆
総合オススメ度 ★★★★★
要約
OL”アキホ” との対話形式で、ニーチェの思想を解説していく。
飲茶氏は、哲学を「白哲学」と「黒哲学」の二系統に分けて説明する。
「白哲学」が本流で、物事の背景にある「本質的なモノ」を探ろうとする。
一方の「黒哲学」は「実存哲学」で「白哲学」に反旗を翻す。意味や本質といった非現実的な存在ではなく、地に足を付けて「現実の存在」に目を向けるべきだ、と主張する。
感想・考察
飲茶さんの本は何冊か読んできたが、抜群に分かりやすく面白い。
哲学関係の本は「入門書」をうたっていても、厳密であろうとする分、最初はなかなか伝わってこない。何度か読み込んで意味を掴めると面白いのだが、そこに辿り着くまでが大変だ。
飲茶さんは伝わりやすさに重点を置いた説明をしてくれるので、とりあえず頭の中にイメージができる。その後にもう少し厳密で難しい本を読むときの羅針盤になってくれるところがある。
本作では作者自身が哲学の世界に入っていった経緯が語られていた。実話なのかフィクションが混じっているのか分からないが、自己開示して自分自身の問題として取り組む姿勢を見せることは正に「実存主義」的だ。
Life is not a problem to be solved, but a reality to be experieced.
というキルケゴールの言葉が好きで、かつて苦しんでいた自分を力づけてくれた。
キルケゴールの思想背景に実存主義があることを知り「人生はその意味を探るためにあるのではなく、今ここで経験すること自体を味わう旅なのだ」ということが更に深く理解できるようになった気がする。
本当に素晴らしい作者さんだと思う。たくさんの人に読んでもらいたい。
哲学は「人生の意味とかを、モテなそうなオッサンがゴニョゴニョ語っているだけ」ではない。多分。