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『「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する』 細谷功

私たちが「世の理不尽さ」を感じるのは「理」え根本的に誤解していることが理由の一つだとし、本書では特に「対称性の錯覚」に着目していきます。

 

タイトル

「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する

 

作者

細谷功

 

あらすじ・概要

  • 対称性の錯覚

例えば「善と悪」は「良いニュースが世に出るのには時間がかかるが、悪いことは一瞬」とか「善事一つで世の中は変わらないが、悪事はすぐに変える」などの非対称性を持つが、我々はあまり意識していない。本書は「物理的非対称性」「知的非対称性」「心理的非対称性」についてそれぞれ解説する。

 

・「知識」と「思考」の非対称性

知識は一度増えると知らない状態には戻れず、不可逆の状態と言える。また「思考」を「具体と抽象の往復による知の創造」と考えると、一度獲得した抽象化パターンを疑いなく使い続ける傾向があり、ここも非対称と言える。

 

・「人間心理」の非対称性

「水は低きに流れる」傾向があり、厳しいものから楽なものへは自然に流れていくが、逆は相当の覚悟が必要。また刺激はどんどん強いものを求めていく。これも不可逆。

 

・「1:9のねじれの法則」

憧れられるヒーロー像と大多数の平凡な人間は大きく異なる。教育の場でも「あるべき姿」と実態に大きな違いがある。例えば「個性的で能動的であれ」というよく話は聞くが、実際の社会システムは「没個性で受動的な人」が大部分でないと成り立たない。「本音」と「建前」も非対称だ。

 

  • 時間の不可逆性

・組織の劣化

組織が大きくなるにつれ「没個性化」「民主化」「性善説→性悪説へ」となっていくのは不可避で不可逆。大きくなり変化した組織を戻すことはできず、新たに作り直すしかない。

 

  • ストックの単調増加性

・増やすことと減らすことの非対称性

「ルール」「会議」「信号」など一度増やすと減らすことは難しい。「成功体験」や「名声」など、成長段階ではプラスに働いたものでも、時間が経ち陳腐化しても更新できずにお荷物になっていく。

 

  • 「自分と他人」の非対称性

・人間の心の絶対的中心

人は自分を中心にして考えることしかできず、「自分」と「他人」の関係は非対称。自分は特別だと思っても他人のことは一般化する。

 

・コミュニケーションという幻想

コミュニケーションで相手に伝わると考えるのは幻想。だが「より気持ちの良い幻想」を求めることは無意味ではない。

 

・「公平」「対等」という幻想

 公平の基準は人それぞれ。人生は「不公平」にできていると考えるべき。

また、リスクを負うプレイヤーと観客は「対等」ではない。

 

  • 「見えている人と見えていない人」の非対称性

 ・見えている人/見えていない人

「分かっている人」と「分かっていないことを分かっている人」は「見えている人」で「分かっていないことが分かっていない人」が見えていない人。

「見えていない人」には問題が見えないので、どれだけ頑張っても言葉は通じない。

 

感想・考察

「時間は不可逆だから、起こったことは取り戻せない」

「自分と他人は非対称だからコミュニケーションは幻想だ」

「人生は公平ではありえない」 

身もふたもないがその通りなのだろう。

 

ある意味の諦観だが「諦めて行動を起こさない」こと勧めるわけではない。「そもそもそんなものだ」という認識からスタートして「だからこそ頑張ろう」という行動に繋げようと訴える。

「無駄な抵抗と努力」を重ねることは無意味ではない。

 

 

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