ただそこにあなたが
初恋に落ち、初めて家族から離れる女性のお話です。
幼い恋の真直ぐさは清々しいけれど、
やっぱり幸せにはなれそうにないだろうな、
というほろ苦さも感じます。
【タイトル】
ただそこにあなたが
【作者】
吉本ばなな
【あらすじ・概要】
大手印刷会社社長の娘である女子高生の美代は
貧しい父子家庭で暮らす安人に恋をする。
美代は交際を反対され、生まれて初めて両親に反発する。
安人とその父に祝福される誕生日にこの上ない幸せを感じながら
毎年恒例だった家族と過ごす誕生日が失われたことを悲しむ。
【感想・考察】
今時「身分違いの恋」というのは大袈裟かもしれないけれど
自分以外の何かに縛られた関係はお互いにとって不幸だと感じる。
本作では男女ともに幼くて、勢いだけが目立つ。
「あなたがそこにいるだけで」幸せと感じるられるのは素晴らしいが
自分自身の確立がなければ、依存に陥ってしまう。
家族から自立しているからこそ、家族を大事にできるし
恋人に依存せずにいられるからこそ、恋人に甘えられる。
初々しさの裏に老練さを感じさせる作品だった。