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大人のADHD ――もっとも身近な発達障害

本書はADHDについての解説ですが

診断方法や混同されがちな他疾患との区別など

診断する側の視点から書かれている部分が多いです。

 

【タイトル】

大人のADHD ――もっとも身近な発達障害

 

【作者】

岩波明

 

【あらすじ・概要】

ADHDとは

注意欠如多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)

以前は小児科の病気だと思われていたが

成人期の発達障害の中で特に症例が多いことが判明した。

小児期のADHDが成人するまでに改善するケースも多いが

ある程度知性が高いADHDの場合、

小児期には症状が明確に出ていなくても

社会人となってから適応が上手くできず発現するケースもある。

家庭環境や養育状況によって発現するのではなく

生まれながらの生物学的な要因に関連している。

遺伝的な要因が最も重要。

 

症状

脳などの器質的な異常は明確には認められない。

・不注意

 集中ができず、ケアレスミスが多い。

 忘れ物、なくしものが多い。片付けが苦手。

 時間を守れない、等。

・多動性

 落ち着きがない。一方的なおしゃべり。

 感情が高ぶりやすく衝動的な行動を取る。

 

成人になると衝動性の高さから、

喫煙や薬物の過剰摂取、危険な運転、

衝動買いなども見られる。

ADHD患者はギャンブルや薬物などの依存症を

発症する確率も健常者の2倍ほどだった。

 

社会生活

小児期のADHDは軽症であれば問題視されないことも多いが

成人してからの社会生活では、責任の重さが上がり

不注意によるミスなどが許されず、

対人関係も構築も難しくなる。

就業しても継続できないケースが多く

社会生活上困難な状況にある患者も多い。

 

ADHDと他の精神疾患

ADHDはうつ病や不安障害などと併存するケースも多い。

ADHDを有する者のうつ病や健常者と比較して

おおむね2倍以上となっている。

 

ADHDを原因とした適応障害でうつ病を引き起こした場合でも

背景にあるADHDは見落とされがちで、うつ病の治療だけが

行われるケースも多い。

統合失調症や境界性パーソナリティー障害などとも

共通する病状があるため、誤診されたり見逃されたりすることもある。

 

ADHDとASD

ASD(自閉症スペクトラム障害)は自閉症や

アスペルガー症候群などなどが含まれる。

「同一性へのこだわり」と「対人相互反応の障害」が

基本的な症状で、特定のモノに強い興味を抱いたり

相手の表情や言葉のニュアンスを読むのが難しかったりする。

 

ADHDとASDは併存することもあるが異なる病気。

ただ行動には類似する点も多い。

ADHDの不注意さと、ASDが対象に集中するあまり

注意の配分ができないことは一見同じに見えたり、

ADHDが不注意で相手の表情を見逃すのと

ASDの相互反応障害が、結果的には似て見えることもある。

 

診断・治療

ADHDで特徴的な臨床検査は存在しない。

児童期かそれ以前の情報が重要となる。

本人や家族の記憶があいまいなことも多い一方で

学生時代の通知表などは重要な情報となる。

 

ADHDの基本的な障害はノルアドレナリンと

ドーパミンの機能障害であると考えられ

それらを改善する薬物療法が効果を示す。

また認知行動療法で改善するケースも多い。

 

【感想・考察】

発達障害の捉え方は難しい。

 

器質的な異常は認められないといっても

遺伝要素が強い以上、何か物理的な原因はあるのだろう。

そしてその発現は、環境要因などの影響を受けて

程度が異なってくるのではないだろうか。

 

ただそうなると「個性」と「障害」の区別も難しくなってくる。

例えば少し前に読んだ、さかなクンの本を見ると

彼は明らかにアスペルガーでADHDの傾向もありそうだが

環境に恵まれ個性を強みとして活かしている。

投薬や認知行動療法で、彼の行動を「修正」するべきでは

無かったと言えるだろう。

 

一方で、社会適応が上手くできず困っている人たちにとっては

投薬などで状況が改善する可能性があると知ることや

「生まれ持った病気の一種」だということの周囲に理解されることは

救いになる可能性があるのだろう。

 

また、診断自体もとても難しいのではないかと感じる。

臨床診断で判断できない以上、患者本人や周囲の情報が基になるが

自分で診断テストをしてみても、

「正直版」と「医者を前にしたらこういうだろうな版」で

回答が異なるし、こういう部分を補正するのは本当に大変だと思う。

 

病気を治すのではなく、社会適応の道を開くことが大事だと思うが

一人ひとり異なる状況で、医者がまとめて対応することは難しいだろう。

 

自分自身と身の回りの人のことを考えるのが精いっぱいだ。。

 

 

 

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