人を助けるとはどういうことか ― 本当の「協力関係」をつくる7つの原則
「支援」は受け取る方も難しいものです。
口出しされると気分が悪いことも多いですが
支援を受けることも社会的な責任であり、
支援をすること、されることの両方が上手な人が
「成熟した人間」なのだな、と思います。
【タイトル】
人を助けるとはどういうことか ― 本当の「協力関係」をつくる7つの原則
【作者】
エドガー・H・シャイン
【あらすじ・概要】
各章で実例も交え、効果的な「支援」を説いている。
最終章の「7つの原則」がまとめになっているので
そこから要約する。
7つの原則
① 与える側も受け入れる側も用意ができているとき、
効果的な支援が生まれる
・支援を申し出たり、受け入れたりするときの意図を
自分自身で把握しておくべき。
・文化的ルールとして、要求された支援を与えること
提供された支援を受け入れることは避けられない。
それを望まないなら、事前にその事態を避ける。
・支援が受け入れられないことで憤ってはいけない。
受入れ側は支援が必要で受入れ可能な状態なのか、
確認してからでなければいけない。
② 支援関係が公平なものだとみなされているとき、
効果的な支援が生まれる
・支援を受ける人は「一段低い位置」にいると感じてしまう。
クライアントの本当の望みを聞き、
クライアントが状況をコントロールできるという気持ちを
持たせることで支援を受け入れやすくなる。
「助けたい」という思いから過剰な支援をしないこと。
・クライアント側からは「何が役に立つのか」を
フィードバックしていくことでより有益な支援となる。
③ 支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、
効果的な支援が生まれる
・支援のスタイルとして以下の3つがある
ⅰ) 「専門家」として知識やサービスを提供する
ⅱ) 「医師」診断し治療をする
ⅲ)「プロセス・コンサルタント」として関係を築く。
まずはプロセス・コンサルタントの役割からスタートし
必要な情報が得られるまでは専門知識を前面に出さない。
・支援段階に応じスタイルを変え、有効性を確認する。
状況は常に変化する。ときにプロセス・コンサルタントの
役割に戻り、全体を眺める必要がある。
・クライアントの側からも、支援のスタイルが
現段階の状況にあっていない場合はフィードバックすべき。
④ 言動すべてが人間関係への介入である
・支援をするにせよ、傍観するにせよ
全ての行動が人間関係、社会関係に影響を与えている。
・クライアント側の言動も相手にメッセージを伝える。
・フィードバックは「事実の記述」に止め
「判断」は入れないようにすべき。
・不適切な励ましや指摘は避ける。
⑤ 効果的な支援は純粋な問いかけから
・求められることが明らかだと思っても、
控えめで問いかけから始め、
どのような方法で反応するかを考える。
・純粋な問いかけとして
過去の経験からの偏見を持たずに
新しい話として聞くべき。
⑥ 問題の当事者はクライアント
・関係を築くまではクライアントの話の内容に
関心を示しすぎず、プロセス・コンサルタントとして
何をすべきかを考えることから始める。
・ 知っている問題に似ていても、他人の問題だと意識する。
解決できるのはクライアント自身で、
支援者は解決方法を見つけることを支援するだけ。
クライアントが依存してきた場合でも
例えば2つの選択肢を提示するなど
クライアント自身のコントロールを奪わないようにする。
⑦ すべての答えを得ることはできない
・全てのケースで正しい解を出せるわけではない。
行き詰まった場合はクライアントと問題を分かち合う。
【感想・考察】
以前会社で外部コンサルタント導入の窓口担当となった。
その時、特に難しいと感じたのは、
上層部の人間が「外部のヤツに何が分かるんだ!?」
という反応で非協力的だったことだ。
・誰とどのような関係を作り、何を対象として、
どのように進めていくか、という
プロセス・コンサルタントとしての役割から入るべき
・クライアントは「一段低い位置」に置かれるので
クライアント自身のコントロールを維持して
当事者意識を持たせるべき。
というような本書の分析を見ると、
まさにその通りだと感じた。
偉ぶらず決めつけず、「控えめな問いかけ」で
相手の求めているモノやその背景にある文化を理解し、
選択肢を与え、相手のコントロール感を奪わないようにし
実際に支援する活動と、一歩引いてプロセスを見る活動の
両方を切り替えながらこなしていく。
そいう意識で取り組むことが必要だったのだろう。
自分自身も支援を受けるのが上手ではないと思う。
自分のやり方にこだわりがあるというよりも
下に見られている感じが嫌いなのかもしれない。
人が「依存→自立→相互依存」という段階で成熟するなら
自分はまだ「自立」ステージを抜けられない「若輩者」なのだ。
人の役に立ち、人に助けてもらう、という社会経済から
離れて生きることはできない。
のであれば、上手くやる方法を身に付けるしかないだろう。