ちあき電脳探偵社
早逝したミステリ作家北森鴻さんの作品です。
小学生向け学習雑誌に連載していたということで
毒のない完全に子供向けの話でした。
小学生の頃の読書の、今と違った楽しさを
思いださせてくれる作品でした。
この作者さんは、普段もっと重めのミステリを
書いているようなのでそちらも読んでみよう。
【タイトル】
ちあき電脳探偵社
【作者】
北森鴻
【あらすじ・概要】
6編のジュヴナイル・ミステリ短編集。
桜並木とUFO事件
刑事を父親に持つ 井沢コウスケ は
転校生の 鷹坂ひなこ を学校まで案内することになる。
コウスケ は ひなこの可愛らしさに
あっという間にやられてしまう。
二人が学校の近くまで来ると
桜の枝が切り落とされ、花がすべてなくなっていた。
また、コウスケのクラスメートは
前日の夜中にUFOを見たという。
その後 コウスケは ひなこ の家に行き
そこに設置された巨大なコンピューターに驚く。
VRゴーグルをかけて入ったヴァーチャルな世界では
普段はおとなしい ちあき が急に男っぽい話し方をして
桜とUFOの事件について推理を始める。
現場に向かった コウスケ と ちあき は
桜並木の中で、1本だけは元々花が開いておらず
枝も切り落とされていないことに気が付く。
幽霊教室の怪人事件
学校の上級生が裏庭の倉庫で幽霊を見たという。
コウスケたちの同級生も忘れ物を取りに行ったときに
教室から幽霊を見たと証言した。
コウスケたちが倉庫の鍵を借りて中を調べると
そこは昔の教室がそのままの形で残され
「宝の場所」を示す地図が置かれていた。
ちあき誘拐事件
コウスケたちは、当たると評判の占い師に会いに行くが
ちあき は占い師が見せたカードマジックの
「マジシャンズ・チョイス」を見抜く。
同じころ、町にはサーカスが訪れており
一日限り無料招待するという招待状が町中の人に届いていた。
学校のホームルームで何かに気づいた ちあき は
急にクラスを飛び出して行方が分からなくなり、
クラスメートや警察も ちあき を探していた。
ちあき が VRゴーグルを起動して表示された
位置情報は サーカスのテントの中だった。
マジカルパーティー
12月24日のクリスマスイブ、コウスケたちの
クラスでパーティーを計画していたが
部屋の飾りもジュースもお菓子も全てなくなっていた。
教室には「XYQK45」というメッセージが残されていた。
雪だるまは知っている
年が明けて数日たった日、コウスケたちのクラスメイトは
風邪を引いた一人を除き、雪の積もった校庭に集まり
雪だるまを作ったりして遊んでいた。
翌日は雪合戦が企画され優勝トロフィーも準備されていたが
皆が集まるとトロフィーが消えてなくなり
ひとつの雪だるまが「怒った顔」になっていた。
ちあきフォーエバー
ちあき たち母娘に家を貸していた金持ちの家主が
立ち退きを求め、彼女たちはせっかく馴染み始めた
町を出なければならなくなる。
その頃、その家主の家で宝石泥棒が入る。
犯人はすぐに捕まったが、宝石が見つからず困っていた。
コウスケ と ちあきは 宝石発見を交換条件として
立ち退き要求の撤回を約束させた。
【感想・考察】
完全に子供向けだった。
子供が面白いと思うものを書ける大人は凄いと思う。
私自身は、子供時代に「心ときめいたこと」は覚えているが
そのときめきを「感じること」はもうできない。
だが作者は「こういうのが楽しいよね」という
感性を持って子供たちに作品を届けている。
おやじギャグの寒い女性教師とか
淡い恋心とか
何となく凄そうなスーパーマシンとか。
こういう瑞々しい感性も持ち続けている作者は
凄いなあと思う。