最後の夏-ここに君がいたこと-
村上春樹さんの「風の歌を聴け」で
「セックスと人の死が出てこないのが優れた小説の条件」
とあった記憶があります。
実際には禁じ手にしたいほど、
人の心を揺さぶる題材だということなのでしょう。
そういう意味では定番ですが
男女の愛と男同士の友情が切なく描かれていて
「大切な人を大切しなきゃ」と思わされる話でした。
【タイトル】
最後の夏-ここに君がいたこと-
【作者】
夏原雪
【あらすじ・概要】
志津、悠太、陸の3人は、何もない小さな町で
幼いころから一緒に過ごしてきた幼なじみだった。
悠太と陸は小学校の頃からサッカーを始めたが
特に悠太は急激に上達した。
県大会で才能を見せた悠太は、
U-20監督のスカウトを受けイギリスへの留学を決め
地元のクラブチームに所属することとなる。
悠太が離れてしまうことを受け入れらない志津も
才能の差に嫉妬していた陸も
悠太の旅立ちを素直に祝福できなかったが
出発の直前、悠太の寂しさを理解した志津たちは
ミサンガを作り贈った。
志津と陸が補習をしていた高校3年生の夏、
「近々帰る」という悠太からの手紙が届く。
やがて悠太が志津と陸の前に姿を現し
3人は久々の再会を喜び合った。
その夜、悠太は「裏山」に行きたいと言い
そこで大量の蛍が光っているのを3人で眺めた。
志津は悠太の言動に徐々に違和感を感じていく。
【感想・考察】
死期が迫っている人との物語や、
死者が「期間限定」で会いに来る話は
定番だが心を揺さぶる。
愛することはある意味「執着」で
「失ってしまう」と思うから
大切だと感じるのかもしれない。
行くのが嫌だった学校でも
卒業を迎えると名残惜しいし
ボロくて買い換えたいと思っていた車でも
いざ廃車にする時には愛着を感じたり
手放す寂しさと執着はとても近く
愛することとも大分重なっている。
執着を手放すことで楽になるのかもしれないけれど
その苦しさが、生きることに色を与えるのだろう。
執着を捨てて達観して生きるのは、まだ自分には無理だ。