毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

愚者のエンドロール 「古典部」シリーズ

「ひとの亡くなるお話は、嫌いなんです」と

本書のラストで 千反田える が語っています。

米澤穂信さんの作品には、

割と不気味な話が多いと思っていたのですが

「人の死なない日常系ミステリ」も上手いですね。

 

「ミステリを書いた人の考えを推理するミステリ」

というメタ的な展開で、

ミステリ好きには間違いなく楽しめる話です。

 

 

【タイトル】

愚者のエンドロール 「古典部」シリーズ

 

【作者】

米澤穂信

 

【あらすじ・概要】

夏休み、「古典部」の部員たちは文化祭の準備で

学校に集まっていた。

 

2年生のあるクラスで文化祭に向けての

映画を撮影していたが、

脚本家が病気で続きが書けず、

途中で止まってしまっていた。

 

古典部のメンバーは

途中まで撮影された映画を見せられ

「クラスのメンバーが予測した筋書きのうち、

どれが正しいか」について意見を求められる。

 

病気で倒れた脚本家は、

「廃坑となった街の劇場で行われた密室殺人」に

どのような結末を用意していたのだろうか。

 

 

【感想・考察】

「ミステリ作者の意図を推理する」

というのは面白い。

 

ミステリ好きに向けた小ネタを仕込みながら

(中村青* は館シリーズだな、、とか)

ミステリの「お約束」を踏みにじっていくのが清々しい。

密室トリックで「いいじゃん、鍵くらい」は爽快だ。

「ドラマとして盛り上がれば、細かいことはいい」

というのもある意味本質的だと思う。

 

作中にも出てくる「ノックスの十戒」や

「ヴァンダインの二十則」とか約束があって

様式美というものできているが、

敢えてそこを裏切って斬新さを生む作品もある。

ミステリ好きは常に「新しい驚き」を求めるから

固定観念ができれば、そこを突いてくるのが定石になる。

 

「ワトソン役は全てをオープンにする」という

決まり事を逆手にとって「叙述トリック」が生まれたり、

「未発見の科学的成果を使ってはいけない」という

決まり事に逆らって「アポトキシン4869」が生まれたりして

ミステリの幅は広がっている。

 

最近では ミステリに恋愛、超能力を絡めるのは、全然アリで

人が死なない話も普通にある。

幅の広いライトな作品が読者層を広げているのだと思う。

 

新しい驚きのあるミステリをたくさん読みたい。 

 

 

 参考:

「ノックスの十戒」

・犯人は物語の最初の方から出てないとダメ

・超能力とか使うのはダメ

・秘密の抜け穴はダメ

・未発見の科学を使うのはダメ

・中国人を登場させてはダメ

・探偵はカンで解決しちゃダメ

・探偵本人が犯人ではダメ

・読者に提示していない手掛かりで解決してはいけない

・ワトソン役の考えは読者に全てオープンじゃなきゃダメ

・双子、一人二役は最初っから提示しなきゃダメ

 

「ヴァン・ダインの二十則」

・手掛かりは全て明白に記述しなきゃダメ

・作者が読者を騙す記述はダメ

・余計なラブロマンスは不要

・探偵、捜査員が犯人はダメ

・ 論理的に犯人が決まらないとダメ

・探偵役がいなきゃダメ

・死体がなきゃ興味がわかない

・占いとはダメ

・探偵役は一人

・最後の方に出てきた人が犯人じゃつまらない

・端役が犯人じゃつまらない

・原則単独犯で

・探偵の解決前に手掛かりはすべて出さなきゃダメ

・余計な情景描写は不要

・プロの犯罪者が犯人だとつまらない

・「自殺でした」は安直

・犯罪の同期は個人的なものの方がいい

・ありふれたトリックは陳腐

 

 

 

 

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