毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

白い服の男

「正義のためなら悪事もいとわない!」という話に

「健康のためなら死ねる!」的な皮肉を感じます。

30年以上前の作品ですが古さを感じさせません。

さすが星新一さんです。 

 

【タイトル】

白い服の男

 

【作者】

星新一

 

【あらすじ・概要】

 ショートショートではなく短編のボリュームで

10話が掲載されている。

 

白い服の男

世界から「戦争」に関する情報を

すべて抹消することを決めた世界。

特殊警察機構は盗聴や告発を利用し

「戦争」を知る者を一人残らず抹殺する任務を負う。

 

月曜日の異変

妻の「がさつさ」に嫌気がさしていた男が

週明けに目覚めると

急に妻が丁寧な言葉遣いをし始めた。

男が妻に話を聞くうち、

妻の記憶が一部入れ替っていることに気づく。

 

悪への挑戦

犯罪者を裁き処刑する風景を生中継する番組が

人気を博していた。

犯罪を減らすためには「徹底的な見せしめ」が

有効だと認められていた。

 

老人と孫

老人と孫はテレビを見るのが好きだった。

銀行の取り付け騒ぎをきっかけに、

内乱が起こり外国を巻き込んだ争乱となったが

老人と孫は全てをテレビ越しに眺めるだけだった。

 

テレビシート加工

テレビ画面が薄く安価になった時代、

テーブル、天井や壁、建物の外壁、道路まで

動きのある「テレビシート」がはられ

全てのものが動いていた。

男が運転する車の外装テレビシートの一部が

故障し止まっていた。

その罪で男は留置所に入れられ

「動かない壁」に囲まれるという罰を受ける。

 

矛盾の凶器

変人科学者が変死した事件を受け

特殊任務担当の刑事が現場に赴いた。

科学者は自らが開発した

「狂人を探知して殺す」ヘビ型ロボットに

首を絞められて殺されていた。

 

興信所

神経科医のエヌ氏は興信所の署長から

「息子が夜毎に外出するのを止めて欲しい」

という依頼を受ける。

深夜に抜け出した署長の息子を尾行すると

彼は墓地に赴き何者かと話をしていた。

 

特殊大量殺人機

条件を入力すれば、それに当てはまる人を殺すという

「陽子振動式・特殊選択的・遠隔作用・大量殺人機」

の開発に成功したエフ博士と助手。

機械を使い確定死刑囚や法が裁けない悪人を殺していった。

研究費用を欲したエフ博士は財界人たちに

寄付を要求する。

 

ねぼけロボット

宇宙船の中で、金属を溶かす粘液を出す

植物が育っていた。

触ることもできず困っていた船員たちは

宇宙船に積まれていたロボットを使って

危険な植物を除去しようとする。

 

時の渦

世界中の人々が「ある特定の日にち以降」のことを

考えることも語ることもできなくなってしまった。

人々はその日を「ゼロ日時」とよび、備えていたが

当日は大きな事件は起こらずに過ぎていった。

ところが次の日、世界は「ゼロ日時」を繰り返していた。 

 

 

【感想・考察】

表題作の「白い服の男」や「悪への挑戦」では

「正義のために手段を問わない」ことの愚かしさを

皮肉っている。

 

自分の「正しさ」を確認し安心するため

「悪」と規定したものは徹底的に排除しようとする。

そういう姿の滑稽さを描いている。

 

この作品の時代では「テレビ」などのマスメディアが

「正義」を作り引っ張るのが、現実的だったのだろうが、

昨今、誰もが情報発信者となって「世の中全体の動向」が

当時以上に力を持つようになっているように思える。

世界がより潔癖になっているのではないだろうか。

 

星新一さんのような、皮肉のこもった風刺が

今また必要なのかもしれない。 

 

 

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