毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

三月の雪は、きみの嘘

「あるところに、ウソばかりついている女の子がいました」

という絵本の引用から始まる、

どうしても「ウソをついてしまう」少女の物語です。

 

少女が、自分を縛る「かつてのウソへの後悔」を

周りを囲む優しい人たちの力を借りて

少しずつ解き前進していく姿が美しい話です。

 

いつか、眠りにつく日」「夢の終わりで、君に会いたい。

 に続く、いぬじゅん さんの「切ない系三部作」最終編で

私的には一番好きな作品でした。

 

【タイトル】

三月の雪は、きみの嘘

 

【作者】

いぬじゅん

 

【あらすじ・概要】

熊切文香は両親の離婚を機に

幼いころに住んでいた浜松の高校に転入した。

 

文香は、相手の顔色をうかがい、自分を守るため

何気ないことでもウソをついてしまう。

「ウソばかりの自分には、本当の友達などできない」

と考え、周囲に壁を作ってしまっていた。

 

ある日文香は同級生の大重拓海に、

冷たく「ウソばっかつくのって疲れない?」

と言われ動揺する。

 

ところが図書室であった拓海は別人のようで

文香に親しげに話しかけ、

「文香がどうしてウソをついてしまうのか」を

解決するためのヒントを渡す。

そこには1冊の本と、文香が幼いころ読んでいた

絵本の一節が書かれたメモがあった。

 

そのメモを見て、かつてその絵本を一緒に読んでいた

「たっくん」のことを思い出し、

拓海が「たっくん」なのではないかと問うが

完全否定されてしまう。

 

拓海から「ヒント」を受け取り、

文香は少しずつ自分の言葉で語ることを取り戻していく。

 

ところが、高校で同じクラスになった 内田則美 は、

文香が小学校時代の友人であったことを打ち明けると

急に接触を避けるようになる。

 

「たっくん」や則美との記憶が欠けていることに

気づいた文香は、かつての思い出を辿り

やがて自分が「たっくん」と別れた日を思い出し

初めてついたウソを思い出した。

 

【感想・考察】

「自分の思うこと」ではなく

「相手が求めていること」を口にする。

 

「相手の気分を害さないため」というのは

自分を守りたいという弱さから発する思いだ。

いつか自分の本当の思いが見えなくなり

相手に踏み込むこともできなくなる。

 

主人公 文香の戸惑いにシンパシーを感じるし、

彼女を受け入れ支えようとする人たちの優しさには

心を打たれる。

 

著者は他の作品にも

「伝えたいことは伝えるべき」で

「苦しい時に偽る必要はない」「世界を恐れる必要はない」

メッセージが込められていて、勇気をもらえる。

 

また良い作者に出会うことができた。

 

 

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