毎日一冊! Kennie の読書日記

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シンメトリー 警部補 姫川玲子

姫川玲子シリーズ第3弾です。

今回は7つの短編集で、

前2作の長編とは違うテンポの良さで

これもまた楽しかったです!

 

【タイトル】

シンメトリー 警部補 姫川玲子

 

【作者】

誉田哲也

 

【あらすじ・概要】

7編の短編集。

 

東京

6年前、玲子がまだ品川署にいた頃、

水泳部の女子高生が校舎屋上から転落死し、

自殺か他殺の判断もつかない状況だった。

玲子は水泳部員の生徒たちに聞き取り調査をし

被害者とは別の少女がいじめにあっていることに気づく。

 

過ぎた正義

女子高生監禁殺人で捕まったが心神喪失で

無罪となった男が交通事故で死んだ。

その直後、15歳の時に強姦殺人を犯したが

すぐに釈放された男が薬物中毒で死んでいた。

 

玲子はかつて両方の事件の捜査に関わっていた

元刑事が「偶然の連続死」に関わっている可能性を疑う。

 

右では殴らない

薬物摂取による劇症肝炎での死亡事故が連続して発生した。

死亡した二人の携帯登録から、援助交際をしていた

女子高生が関わっていたことに辿り着く。

三十路の玲子は、オバサン呼ばわりする17歳に

容赦ない口撃を畳みかける。

 

シンメトリー

鉄道駅で働いていた男は、親しくなった女子高生が

脱線事故で死ぬ現場に立ち会ってしまい、

みずからも片手を失った。

脱線事故の原因は、飲酒運転で踏切に進入した車だった。

その運転者は百人以上の死者を出したにも関わらず数年で出所した。

元駅員の男は、脱線を引き起こした運転者へ復讐をする。

 

左だけ見た場合

手品師の男が殺害された。

かつての知り合いの話で、元大工だった被害者は

石膏ボードの盗難被害から借金を背負って廃業し

手品師になったとのことだった。

被害者の携帯には045で始まる電話番号が残っていた。

 

悪しき実

アパートの一室で男性の死体が発見され、

同棲していたホステスが参考人として拘置される。

ホステスは「自分が殺した」というが

被害者の身元を明かそうとしない。

玲子は現場で小さな木彫りの箸置きのようなものを発見し

また部屋にあった既に死んでいる暴力団関係者の写真を見て

過去の事件とのつながりを見つける。

 

手紙

5年ほど前、玲子がまだ捜査一課に配属される前、

玲子はOL殺人事件で被害者会社同僚の聞き込みを行い

被害者が使っていたパソコンの履歴から犯人に辿り着いた。

刑期を終えた犯人から、玲子は手紙を受け取る。

 

 

【感想・考察】

短編集なので1話1話が短くまとまっているのでテンポが良い。

前2作とはまた違う玲子の姿が描かれていて楽しむことができた。

 

タイトルの「シンメトリー」というのは

収録されエイル短編のうちの一つのタイトルだが、

同時に本書全体の構成がシンメトリーになっていることも

表している。

 

① 東京 と ⑦手紙は

両方とも玲子が捜査一課に来る前の話であり

「罪と赦しと罰」がテーマになっている。

女子校でのいじめと会社でのいじめが対を成していて

年長の男性が罪を犯した女性を救うという構成だ。

 

②過ぎた正義 と ⑥悪しき実 は

元警察官の 正義感による自罰と、

元暴力団の 罪悪感による自罰が並べられている。

 

④ 右では殴らない と ⑥左だけ見た場合 は

タイトルも右と左で対応しているし

「自分と社会は関係のない別物」と考える女子高生と

「悪いことはすべてを社会のせい」にする男が対比されている。

 

全体の中央に置かれた ⑤シンメトリー は

対称性にこだわる犯人視点の倒叙形式で

人称も形式も対応するものがない。

 

なかなか細かい技が効いていて面白い。

 

 

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