毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

十万分の一の偶然

事故現場を写した報道写真を巡るミステリです。

松本清張氏による「社会派ミステリ」なのですが

本書で投げかけられた「メディアの能力や役割」への疑問が

昨今では大きく変質していることを感じました。

 

【タイトル】

十万分の一の偶然

 

【作者】

松本清張

 

【あらすじ・概要】

東名高速道路の沼津インター付近のカーブで

6人が死亡する事故が発生した。

その事故直後の様子を捉えた写真が

新聞社の「読者の最高賞」を受賞した。

 

被害者女女性の婚約者だった男 沼井は

撮影したアマチュア写真家が、功名心から

事故を誘発させ写真に撮ったのではないかとの

疑いを持ち始める。

 

沼井は追突事故の先頭にいたトラックが

急減速してハンドルを切ったのは

道路上に何かを見たからだと考え

地道に調査を重ねていく。

 

【感想・考察】

タイトルにあるように、本書が執筆された1980年頃であれば

事故現場がタイミングよく撮影されることは

「十万分の一の偶然」だったのかもしれない。

 

だが、数億人から数十億人がネットワークに接続できる

「カメラ」を常時持ち歩いていて、

街には監視カメラが溢れている現代では

事件の現場が写真やビデオに収められることは

全く珍しいことではなくなった。

 

高い確率で現場の証拠が残ることは

事件の原因究明や再発防止に役立つことだろう。

事故を記録する「目」が増えたことから

本書のように一部の報道カメラマンが恣意的な

演出をすることも難しくなっているのだと思う。

 

一方で、インパクトの強い写真やビデオが

入手しやすくなったことで、

それを利用して恣意的に扇動することもある。

 

本書で松本清張氏が投げかけたものとは質が変容しているが

メディアリテラシーを持つことが必要なのだと感じる。

 

 

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