毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

ウィザードグラス

個人情報の扱われ方に警鐘を鳴らすお話でした。

便利さとプライバシー保護はトレードオフの関係で

「自分で選択しているつもりが、

いつのまにか支配されていませんか」と警鐘を鳴らしています。

 

【タイトル】

ウィザードグラス

 

【作者】

根本総一郎

 

【あらすじ・概要】

幼い頃、両親が離婚してから

陽輝(はるき)は兄の那月(なつき)と別れて暮らしていた。

 

一年ほど前にあった時、

那月は 検索大手のGloobe で働いていたが

半年ほど前から連絡が取れなくなっていた。

 

ある日、陽輝の元に兄からの小包が届く。

中身は「Wizard of LOG」というタブレットと

「Wizard Glass」という眼鏡型のウェアラブル端末だった。

 

「Wizard Glass」 を通して スマートフォンを見ると

Gloobe での検索履歴が浮かび上がってくる。

また「Wizard of LOG」には、付近のスマートフォンの状況が

表示されていた。

位置情報を表示することができた。

 

しばらく興味本位で Wizard Glassを使ってみた陽輝は

それが極めて危険な道具である事に気づく。

また Wizard of LOG に、管理者が設定したターゲットの

位置情報を表示する昨日もあることを知り、

那月につながる手がかりを探すため

ターゲットを尾行することにした。

 

ところが、一人目のターゲットである漫画家は

美人局的なスキャンダルの告発を受けることになり

二人目のターゲットである大学教授も

目の前で痴漢冤罪で捕まってしまう。

 

Wizard of LOG、Wizard Glassの「管理者」たちの

意図に気付き始めた陽輝は、その背後を探り始め

やがて 兄 那月の残したメッセージにたどり着く。

 

【感想・考察】

根本氏は初期の作品である「幻覚少女」でも

とある政治家の「報道された出来事と真の想いの違い」が

生み出した悲劇を描いている。

ごく初期からマスコミに対する不信感があり

「一人一人の人間の真の姿を見るべき」という思いがあったのだろう。

 

本作では舞台がマスコミから、SNSなどのネットメディアに

移っているが「人を人として見るべき」という

テーマは通底していると感じる。

 

前作「プロパガンダ・ゲーム」もマスコミ関係の話だったが

その登場人物たちが登場し、マスコミの立場に立って

「正しい見方」を追求する姿勢を深めているのも嬉しかった。

 

自分自身のことを考えると

GoogleやAmazonの便利さは圧倒的で

トレードオフとして多少の個人情報が使われることは

「べつにいいんじゃない」というのが正直なところだ。

 

ただ、個人情報を握られているということは

何らかの事情で「管理者」から攻められる立場に立つと

完全に無防備になる。

無意識に管理者に対して従属することになるのかもしれない。

 

また「より、あからさまでない誘導」により

自分自身が選んだつもりで、コントロールされているのかもしれない。

以前、楽天が送ってくるスパムメールに嫌悪感を覚え、使わなくなったが

ほとんどメールを送ってこないAmazonには相当依存してしまっている。

 

情報処理が人間の理解できる範囲を超えてきているなか

自分の個人情報がどう扱われるのか想定できず

情報を出す段階で意識する必要が高まっているのだと思う。

 

 

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