毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

いたいのいたいの、とんでゆけ

凄惨で救われない状況に堕ちた二人が

その中で最大限の喜びを見つけていきます。

バッドエンド風ハッピーエンドが切ない恋愛小説です。

 

以前読んだ同じ作者の「三日間の幸福」も

最終的な救いはない中で幸せを見つける話でした。

本作では、より深い絶望の中で

より鮮やかな幸福をつかみ取る二人が美しい。

 

グロいシーンが多いので

そういうのが苦手な人にはお勧めしませんが

美しく、心動かされる話です。

 

 

【タイトル】

いたいのいたいの、とんでゆけ

 

【作者】

三秋 縋

 

【あらすじ・概要】

12歳の男子小学生 湯上瑞穂は転校する直前に

クラスの女子 日隅霧子から「文通」を申し込まれる。

お互いのことを知らないまま始めた文通だったが

二人の感性が生き別れの双子のように通じ合っていった。

 

中学に進学した 瑞穂はクラスに馴染めず

孤独な学生生活を送っていたが、

霧子に惨めな現状を伝えられず

彼女が送ってくる充実した生活に合わせ

「格好をつけた架空の生活」を書いていた。

 

17歳の秋、霧子から「直接会って話がしたい」と

伝えられた瑞穂は、自分の惨めな現状を見せられず

手紙を無視してやり過ごした。

その後数通届いた手紙も無視し、

いつしか二人の関係は途切れてしまった。

 

22歳になった瑞穂は、友人進藤の死をきっかけに

部屋に引きこもる生活に陥ったが、

進藤が死ぬ前に「お前は霧子に会いに行くべきだ」と

言ったことを思い出し、

5年ぶりに霧子に手紙を出して会いに行くことにする。

 

瑞穂は待ち合わせに指定した公園で

日付が変わるまで待ち続けたが、霧子は現れなかった。

落胆した彼はコンビニので酒を飲み、

酔いがさめる前に豪雨の中飲酒運転をする。

 

一瞬、意識を失った瑞穂は人を轢いてしまう。

が、車体に衝撃はなく、人を轢いた痕跡もなかった。

 

背後から現れた少女は

「私はあなたに轢かれ死んでしまったが、

なかったことにした」と言う。

 

死ぬことを「先延ばし」にした少女は

残された最後の10日間で

かつて自分を虐げてきた人たちに「復讐」することを誓い

瑞穂も少女と行動を共にする。

 

 

【感想・考察】

めちゃくちゃ切ない話です。

どこにも出口のない凄惨な極限状態の中で、

互いの痛みを「いたいのいたいの、とんでゆけ」と

いたわり合えることの幸せさ。

甘酸っぱい感じのラブストーリーもいいけれど

「高校教師」を彷彿とさせるような

堕ちていく恋愛物語も面白い。

 

 

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