毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

妹と猫

 5つの短編集です。

 若干ミステリ風な「ノック屋・その後」での

洒脱な会話も大好きなのですが

表題作の「猫と妹」は傑作だと思います。

 

【タイトル】

妹と猫

 

【作者】

奥田徹

 

【あらすじ・概要】

 ヨビダシガカリ

地元に帰った僕は、同窓会の呼び出し係として

当時人気のあった女性の呼び出しを命じられる。

久しぶりに会っ彼女は、40代になっても

とても綺麗な顔立ちだがどこか疲れていていた。

「あの時、ああしておけば良かった」と思うことを

取り戻そうとする二人だが、

やっぱり二人ともあの頃のままではなかった。

 

ランチタイム

父が事故にあったいう連絡を受け、

僕は帰省し見舞に行った。

母は父と離婚し、すでに他の家庭を築いていたが

父は「母さんのことはまだ好きだ」という。

父の入院を母に知らせ

久しぶりに会った母は相変わらず奔放に生きていた。

 

異父兄妹にあたる母の娘が

母の手作り弁当を持って現れ

僕は自分が兄であることを明かさず、

彼女と話をする。

 

 

ノック屋・その後

あまりにも不自然に何かを受け渡すところを見つけ

気にあって後をつけていくと

背の高い男に威嚇され、数日後には部屋を荒らされ、

仕事先の古本屋兼便利屋で店長に相談する。

店長と歩いていると、道端で動かなくなっている女性を発見する。

 

 

 

プレゼント

僕は夏の最中のエアコンの清掃作業で

暑さにやられそうになる。

現場に向かう途中の工事現場で

片目に眼帯をした女性の警備員を見つけた。

彼女はなぜ警備員をしているのだろうか。

 

 

妹と猫

毎日カレーを作るのが趣味で

近所の猫になついてもらおうと頑張っている僕。

自殺未遂を起こした妹を引き取り

実家に戻るまでの間、兄妹の二人で暮らすこととなった。

僕は妹の生活に干渉しないようにしていたが

妹と「駆け落ちするつもりだ」という

中年のストーカー男の話を聞き不安に思う。

 

その頃、学生時代の同級生と偶然出会い

二人で「背徳感のあること」を楽しもうとする。

 

 

【感想・考察】

奥田さんの作品では、

時々、家族と向かい合う距離感の独特さを感じる。

 現実と自分自身の間に薄い壁があるような雰囲気のものも多いが

どこか冷めた目で人間関係を見つめる自我があるのだろう。

 

本短編集の「ランチタイム」や「猫と妹」でも

若干こじれた家族関係になっているが

家族との絆を深めたいという思いが感じられる。

「猫に懐いてもらいたい」という僕の想いが

「しっくりきた」というオチは嬉しい。

 

珍しくミステリ風な「ノック屋・その後」は

以前の短編集「エイプリルフールに百歳で死ぬということ」

にあった「ノック屋」からつながる話だった。

飛躍しまくる僕と店長の会話が楽しい。

 

5編とも、印象に残る良作でした。 

 

当ブログは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムであ「Amazonアソシエイト・プログラム」に参加しています。