毎日一冊! Kennie の読書日記

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欧州ポピュリズム ──EU分断は避けられるか

EUで力を付けつつある「ポピュリズム」

を解説しています。

 

EUの歴史や機能についても学べるので

欧州の状況をざっくり知りたい人には

役に立つと思います。

 

【あらすじ・概要】

欧州各国でポピュリスト政党が力をつけ

EU統合に影響を与えつつある状況を解説する。

 

欧州ポピュリズムとは

 

ポピュリズムは

「大衆」と「特権エリート」との対立を前提とする。

ポピュリズム自体は政治イデオロギーとはいえない。

欧州では「排外主義」や「反リベラル主義」などと

結びつき活動している。

 

一方で西欧諸国の秩序の核は リベラル・デモクラシーにある。

国家や個人の恣意的な権力行使を避け

法による支配を行う「リベラル」を柱としつつ、

法が特定集団の支配を隠蔽しないよう、

最高権威は人民にあるとする「デモクラシー」の体制を持つ。

 

グローバル化の進展で不利益を被っていると感じる層は

EUの「グローバル化管理」が不十分であると捉えている。

排外主義ポピュリストは国境管理などの分野で

EUの政策を批判し支持を集めた。

 

またEUの影響分野が拡大し

各国内で民主的な「政治」を行う余地が減少し

既存政党の政策が同質化していることも

ポピュリスト政党が攻撃するポイントとなっている。 

 

 

EUとはどのような存在なのか

当初EUは欧州内の経済的統合「単一市場」を目的とし

派生的に「共通通商政策」、「人の自由移動」、

「通貨統一」などの政策が実施されていった。

 

EUに加盟するための「コペンハーゲン基準」を満たし

加盟国の承認を得れば加入できる。

加盟のためには「アキ・コミュノテール」とよばれる

既存EU法体系を受け入れなければならない。

 

一方で一度加入した加盟国に対して

脱退させる手続きはなく、

権利停止も全加盟国の承認が必要でハードルが高い。

「反リベラルEU」的な政策をとるハンガリーなども

脱退させることはできない。

 

また、EUの組織は「テクノクラート」的な

高度専門家の集団であり、内部に「野党」はいない。

コミッションでのコンセンサスにより

立法、政策を決定している。

 

一方でEUによる施策は

「補完性原則」と「比例性原則」に縛られている。

補完性原則はEUに権限が存在しても

EUと各国政府のどちらが行うべきかを

「行動の規模・効果」に照らして決定する原則であり

「比例性原則」は、EUの権限内で

もっとも関係者の負担が少ない

施策を取るべきとする原則である。

 

リベラルEUのゆくえ

 

ポピュリストが優勢な東側諸国では

メリットの大きい経済面での統合は維持しつつ

移民管理などは各国に戻すべきとし、

EUで扱う内容を個別に見直す

「アラカルト欧州」方式を推進している。

 

一方でEU側は

国ごとに貢献できる能力に差があるので

まずは余裕のある国が先に施策を進め、

その後他の加盟国が統合するという

「二速度式欧州」を目指している。

 

 

【感想・考察】

EUはテクノクラートの集団で

民主的なプロセスを経ずに政策決定をしている

という認識はなかった。

 

「多数決」をベースにしたデモクラシー体制では

背景の異なる多くの国を引っ張っていくの

難しいということは間違いないのだと思う。

 

とはいえ、法を最高権威とする「リベラル」な体制では

権力の集中による弊害を排除できない。

 

社会保障などの分野では、各国が民主主義的な扱いをし

安全保障や経済的な統制は、超国家EUが統治する

という分権のしかたも一つの解だとは思うが

相互に影響する部分があり単純ではない。

 

思えば日本も、民主主義的な政治の世界と

テクノクラートによる官僚の世界の二重構造で

上手く運営されている。

とはいえ、官僚を監視する機能は弱く

そこが弊害となっているケースも多い。

 

民主主義が権力を監視する機能は活かしつつ

より高い執行力を持つ政治体制の実践例として

EUによる欧州統合の先行きに興味がある。

 

 

 

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