毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

完全教祖マニュアル

「教祖になって甘い汁を吸い、後世に名を残したい人」

に向けたマニュアルです。

宗教を揶揄うような表現ですが、どのような背景であっても、

「ハッピーになる人がいるならいいじゃん」というスタンスです。

教祖になりたい人には必読の書だと思います。

 

【タイトル】

完全教祖マニュアル

 

【作者】

架神恭介、辰巳一世

 

【あらすじ・概要】

 

教義を作る

実利的に「神」(あるいは相当する信仰対象)

 の役割を定義する。

困っている人を助けるのではなく、

困っていることを肯定できるようにするのが神の役割。

 

一から教義を作るのは大変なので

既存宗教を利用しつつ、オリジナリティを加えたり

先鋭化したりするのがオススメ。

 

「反社会的」な要素を組み込むことが大事。

キリスト教などメジャーな宗教でも

当時の社会の枠組みで虐げられていた人々に訴え

その時代には「反社会的」だったことを当たり前に変えた。

 

高度な哲学を組み込み、体系立てることが必要。

ただこれは教祖自身が行う必要はなくインテリに作らせる。

釈迦の様な天才であれば別だが、キリスト教などは

教祖が語った言葉を後継者が体系立てている。

 

インテリを巻き込むためには

やや突飛な「前提」と「問題点」を結びつけること。

仏教であれば「輪廻転生」という「前提」と

「生きることは苦しみに満ちている」という問題を結び

「修行により輪廻から離脱する」という解決を示している。

「前提」と「問題点」があればインテリが勝手に解釈してくれる。

 

大衆に迎合する

高度な哲学を備えつつも、教えは簡略化する。

「どのようなプロパガンダも、その知的水準は

獲得すべき太守の最低水準に合わせるべき」

 

極めて高度な哲学体系となっている仏教も

「南無阿弥陀仏と唱えれば極楽浄土に行ける」

と極端に簡素化した浄土教が日本では広がった。

 

人が求めるのは「現世利益」

その人が「良い」と考えていることを後押しするのも

当人にとっての利益となる。

 

「偶像崇拝」には大きな力がある。

偶像を禁じる宗教も、その力を懸念している。

 

信者を保持する

 

宗教を持たない人は「オカルト的体験」を消化できない。

「不思議」に「意味付け」することで安心できるし、

その世界観を捨てることができなくなる。

 

「困っていること」を作り出し、救済を与える。

「アダムとイブの原罪で、このままだと地獄行き」と

言われると平和な日常を送っていた人も不安になる。

仏教でも「生きているだけで困っているだろう」とする。

 

そこで「神を信じれば天国に行ける」

「修行して悟りを開けばオッケー」という救いを与える。

 

食物規制や独自の暦、イベントなどで

「自分たちが特別だ」ということを繰り返し意識させる。

 

教義を進化させる

「ただ信じればいい」というのは意外に難しい。

権威を振りかざし義務を与えることで

信者は「自分で判断する」大変さから解放される。

 

科学的体裁をとることも効果的。

 普通の人は信じたいことを信じるので、

「科学的検証」で反証されることを恐れる必要はない。

 

布教する

費用対効果の高いところから布教を進める。

弱っている人、 金持ちを狙う。

「豊かな物質生活より、教義に従うのが幸せ」

と本気でハッピーにできるのであれば

お金を取ることを躊躇する必要はない。

 

個別訪問は効率が悪く思えるが、

「将来困るかもしれない潜在信者」に

印象を残すだけでも意味がある。

 

コミュニティを作り、居場所を作ることも重要。

別世界を印象付ける宗教建築も役に立つ。

 

困難に打ち勝つ

他教団の弱点を突き勧誘するのは有効だが

やりすぎると敵を増やす。

他教を認めつつ、その教義を自分たちの中に取り込むのも手。

 

新興宗教は迫害を受けやすいが、

むしろ内部的な結束を高める効果もある。

 

甘い汁を吸う

教祖にとって出版は美味しいビジネス。

教徒が確実に買ってくれるし、

布教のため複数冊買う人も多い。

「不要なもの」に別の価値観を与え売るのも有効。

 

喜捨が教団内のでポジショニングに影響するようにしたり

名誉欲を刺激するような方法を取る。

「お金のある所からとる」のが鉄則。

 

後世に名を残す

奇跡は弟子たちが作り上げる。

自分は何もしなくても話を少しずつ持ってくれる。

何もしないで、悠然としていることが大事。 

 

 

【感想・考察】

 宗教をおちょくる視点で書かれているので

真面目な信仰を持つ人には不快な本かもしれない。

 

とはいえ単に宗教を否定するものではなく

既存の宗教についてよく学んで書かれており、

「結果的にハッピーにしている」宗教には

大きな価値があると認めている。

 

また、本書の内容は宗教に限らず組織やビジネスの

運営全般に活かせる部分もある。

逆に、宗教団体に限らず、一般企業などが取っている

戦略の裏を見抜くことにもつながる。

 

例えば以下のような点だ。

 

・今の社会常識で 不遇なことに焦点を合わせ

 その点で「反社会的」な目的を掲げる。

 

・判断を面倒と感じる人にとっては、

 方向性を示すのは、束縛ではなく導きとなる。

 

・「独自の哲学」と「現実の問題点」を結び付ける。

 理論を体系立てるのはインテリに任せる。

 

・独自の規則などで組織への帰属意識を高める。

 

・困っていることに気づいていない人の

 「困りごと」を可視化する。

 

宗教関連の本とは思わずに読んでみることをお勧めする。

 

 

当ブログは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムであ「Amazonアソシエイト・プログラム」に参加しています。