くじらの夢
「高校生のラブストーリー」です。
結構過激なラストですが、ある意味きれいなハッピーエンドになっていると感じました。心が温かくなる話です。
【作者】
高山環
【あらすじ・概要】
宮崎に暮らす女子高生リサは友人グループとカラオケに行く。
グループの陽菜はカラオケ採点の罰ゲームとして、「知的障がい者のイオンと3日間付き合う」ことを提案する。リサは陽菜の提案に憤りながらもゲームに参加する。結局リサは最下位となって、翌日から3日間イオンと付き合うことになる。
イオンは罰ゲームであることを理解しながら、
付き合っている3日間、リサに優しさと純粋な好意を示す。
3日間の罰ゲーム期間終了後も交流を続け、やがて本当に付き合い始める。
付き合い始めた二人の周りに、様々な問題が立ちはだかる。
【感想・考察】
他者を下げることで自分を相対的に上げようとする「マウンティング合戦」にイラ立つリサを、「自分と相手の関係だけ」を見るイオンの真っ直ぐさが癒していったということだろう。
イオンは「障害を持っているから、純粋で一途」なわけではない。
自閉症傾向の人でも、コミュニケーションに苦しむことで、捻くれて狡くなる人もいるだろう。
イオンは、日常生活に苦労しながらも、自分自身や相手をそのまま受け止める強さを持っていた。
リサがイオンに惹かれたのは同情によるものではなく「自分にない強さへのあこがれ」があったからだと思う。
そして、リサの母や姉、友人たちの暖かさが、とても嬉しい。
暖かい気持ちになれるストーリーだった。