月の女神に、希望の歌を
「ちょっと変わったタイムリープ恋愛もの」です。
「僕よりも、ずっと先の未来を生きていく本宮美憂さんへ」という導入から、ガツンと引き込まれました。面白いです。
【作者】
ヤマダマコト
【あらすじ・概要】
新潟県の月潟に住む、小学5年生の井浦洋平は、転校生の坂口真由と、地域のドッチボール大会を契機に親しくなる。そして中学に進学した二人はお互いに惹かれあうようになる。
二人はある月夜に舞う、青く輝く蝶のような「オオミズアオ」に心を奪われる。洋平はカメラを持ってこなかったことを悔やむが、真由は目に焼き付け忘れないと誓い言う
「平成5年7月27日、私、坂口真由は、井浦洋平と一緒にオオミズアオを見ました」。
数日後、図書館で勉強をしていた真由と洋平は変質者に襲われる。洋平はトイレで刺され、真由は廃病院に連れ去られ殺されてしまう。一命をとりとめた洋平は、真由の喪失に耐えられず、逃げるように月潟から離れていった。
14年後、27歳になった洋平は、叔母が経営する写真館のカメラマン店長として月潟に戻る。そこで出会った小学4年生の少女、本宮美憂と出会い、奇跡を目の当たりにする。
【感想・考察】
ヤマダマコトさんの作品には、独特な「生死観」が流れている。
「死」そのものをグロテスクに捉えながら、「魂」の永続性を感じている。
原初的で土着的な感覚なのだろう。
最初の頃は、著者が作品舞台を常に新潟にする必然性が感じられなかったが、この土着的な雰囲気は、例えば東京では成立しないものなのだろう。
著者は、この物語を「ハッピーエンド」として書いているのだと思うが、その土着的な雰囲気に馴染んでいない立場からは「残酷で悲しい話」に見える。
そのギャップがフックとなって印象的なストーリーとなっているのだろう。
とても面白かった。