しろいくまとくろいくま
「ごまかさずに自分の物語を生きる」ということでしょうか。
「熊や猫たちの国に迷い込む」というファンタジー寄りの設定ですが、心の内側を覗き込むような怖さも感じる話でした。
【作者】
高山環
【あらすじ・概要】
ケイスケとの新婚生活を送っていたサツキ。
冷蔵庫のサケフレークが無くなっているのに気づき、翌日、冷蔵庫を覗く白いこぐまを見つける。サツキはケイスケに こぐまの話をすることを躊躇する。同じ頃、街に椋鳥の群れが現れ、急に姿を消すという事件も起きていた。
ある日いつも通り会社に出かけたケイスケが、翌朝になっても帰らず「暫く家を出る」とメッセージを残す。
サツキはケイスケの実家を訪れ、義母にケイスケがいなくなったことを伝える。義母はケイスケの父である義父も20年間ほど家を離れたいたことをサツキに告げる。「ただ待つことが当然」という義母に対し、サツキは「ケイスケを探しに行く」と言う。
そして長く働く家政婦は、ケイスケの義父がいなくなった時にも、新巻鮭がなくなる事件があったことをサツキに告げる。
その夜、大きな白熊が訪れサツキを連れ出す。白熊は「世界が綻び始めている。世界を直すことができるのはサツキだけだ」という。白熊 は 黒熊 の追手を逃れながら、サツキの「まだ誰にも語っていない物語」の中に入り込んでいく。
【感想・考察】
仕事にも夫の実家にも、強い信頼を寄せている夫に対しても、適度な距離を置いて問題の無い関係を保とうとするサツキ。少しずつ無理をすることで生じた心の微かな歪みが「サツキの物語」を崩壊させようとしている。
「自分自身の物語を大切にしなさい」という話なのだと思うが、妙に寒々しく、怖さを感じるのは何故だろう。