WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~
作家と読者のコミュニティ「コルク」を運営する 佐渡島庸平氏による、「ネット時代のコミュニティの作り方と運営」について述べる本です。
「宇宙兄弟」から引用した「We are lonely, but not alone.」という言葉には強く共感します。人は結局は孤独で、どんなに探しても「自分と同じ誰か」はいない。それでも日々の生活では支えてくれる沢山の人がいる。
【作者】
佐渡島庸平
【あらすじ・概要】
本質的に Lonely な人間が、どのように Not Alone になれるか、コミュニティについて探った本。
面白い部分、気になった部分を以下に挙げる。
・安心と自由はトレードオフか
安心感はあるが自由のない村社会から、徐々にコミュニティを失いつつある。地理的・物理的な制約下で生まれたコミュニティに後から参加するのではなく、「好き」をベースにしたコミュニティを作り出すことに可能性があるのではないか。
・インターネットによる滑らかな社会
ネット普及以前は社会の仕組みに自分を合わせていた。技術の進歩により、欲望をなめらかに実現できるようになってきている。
・マジョリティの孤独
ネットの発達はLGBTなどマイノリティのコミュニティを発達させたが、「自分たちが何を欲し、どう生きたいのか」を意識せず、社会規範を不自由と思わず従ってきたマジョリティは、所属するコミュニティを失いつつある。
・楽天とAmazonの違い
サービスの設計には「時間節約」と「時間消費」がある。クリック回数を極限まで減らそうとするAmazonは時間節約志向で、分かりにくいが探す楽しみのある楽天は時間消費志向。
・熱狂と安心
本気の人間が死ぬ気で熱狂していて始めて成功できる。
一方で、人それぞれに求めるものは違い、強要されると安心感を失ってしまう。安全・安心を確保することはコミュニティ創設の第一歩となる。
・自分の物語を何度も語れ
自分について語ることは自分の居場所を自分で知る行為。その行為をおろそかにすると、他人の目的地を自分の目的地にしてしまう。
【感想・考察】
安野モヨコさんの「変態とは目を閉じて花瓶の形を両手で確かめるように自分の欲望の輪郭をなぞりその正確な形を突き止めた人たちのことである」というのは面白い言葉だ。
土着的なコミュニティが失われつつある現代では、自分の欲望を正しく把握し、「好き」をベースにコミュニティを作る。
渦を巻き起こす人と渦に巻かれる人がいるのではなく、参加者一人一人が自分のテンションに合わせて、自ら動いていくようなコミュニティを志向しているのは、他者が編集者という立場でクリエイターの自発的な動きを牽引してきたからなのだと思う
自分のやりたいことを把握することが、自由につながるのだろう。
【オススメ度】
★★★☆☆