毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

二億円のドーナツ

 とある地方都市の駅前再開発計画を巡るお話です。キャラクタが魅力的で楽しく読めるストーリーでした。 

 

【作者】

 高山環

 

【あらすじ・概要】

 都内まで片道2時間かかる地方都市の広山市に暮らす高橋。商業施設を作る計画が立ち上がり、 高橋が所有する土地が高値で売れる可能性が出てきた。

 駅前商店街のオーナーたちや、自然保護団体の人々が商業施設に反対する気持ちも理解する一方で、都会に引っ越したい妻の想いや、放っておけば商店街は衰退するだけだという開発会社の主張ももっともだと思う。

 同じころ、明治時代に広山市の発展に寄与した田畑老人の分身が高橋の周りに現れ、「蝶の化石を捜して欲しい」、「ドーナツに穴が開いている理由を教えて欲しい」と言う。

 駅前商業施設の是非で論争が激しくなる中、高橋は田畑老人に導かれ、広山市で採掘された石が使われている国会議事堂や、かつての採掘場に訪れる。

 

【感想・考察】

 前回読んだ「箱の中の優しい世界」でもそうだが、この作者は社会問題を語りつつ、個人の心にも深く切り込んでいく。

 今作では、衰退していく地方都市の問題を中心テーマとしつつ、「自分という軸がない」と考えている高橋が、ドーナツの穴のように「空であるという軸」を持ち、人々の想いを尊重しながら自分の思いを前面に出すことを学ぶ物語でもある。

 ひたすら「自分の目標」に向けて歩む人は、強いが危うい。人々の想いを受け入れる「空」を持ちながら自分自身を生きる姿勢は美しいと感じた。

 「星の王子さま」の言葉が随所にちりばめられているが、この作品では「大切なことは目に見えない」という言葉を、作者なりに解釈したものだと思う。

 色々と考えさせられる良作だった。

 

【オススメ度】

  ★★★★☆

  

当ブログは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムであ「Amazonアソシエイト・プログラム」に参加しています。