ある愛の終わり
ドイツ州知事候補の愛人が殺され、女性刑事の二人組が犯人を追い詰めるストーリーです。個人的には移民政策などドイツの政治事情がリアルに伝わってくるのが興味深かったです。
【作者】
マルクス・ヒュネベック
【あらすじ・概要】
ドイツ州知事候補のゾンボーンはその卓越した手腕で、選挙での勝利をほぼ確実なものとしていた。ところがある日、選挙の支援者であるミリアムの密会で彼女と仲たがいし、翌日には彼女が殺害されているのが発見された。
女性刑事のアーニャとナディーネは、ミリアムの交際相手から事情聴取し、やがてゾンボーンの存在に辿り着く。
【感想・考察】
ミステリとしての展開はあっさりしているが、現代ドイツの状況が生々しく伝わってくる。
歴史的背景から外国人の受入れを排斥する態度は取りづらく、それでも「頭にスカーフを巻いた妻と6人の子供が一言もドイツ語を話せないような、ドイツに溶け込もうとしない外国人」に苛立つ。
近年のドイツ経済の発展はEU統合のメリットを享受してのことだと理解しながらも「ギリシアやポルトガルなどの債務国を支えさせられている」という不満が募る。
身近なところでも、ドイツ就労ビザを取るのはやたら煩雑だし、一部地域では赴任者家族にも相当レベルの高いドイツ語教育をビザ継続の条件とするなど、外国人の流入を歓迎しない施策を取りながら、それを声高に主張することはない。
本音と建前の乖離の大きさは、政治的にはリスキーな要素だと感じているので、この作品での政策の描写は興味深かった。
【オススメ度】
★★☆☆☆