屋上の名探偵
著者デビュー作の「名探偵の証明」で、主人公の屋敷に憧れつつ彼に引導を渡した 蜜柑花子 の高校生時代を描く作品です。名探偵蜜柑が痴情のもつれを解決!
【作者】
市川哲也
【あらすじ・概要】
4つの連作短編集。超シスコンの高校2年生 中葉悠介を語り手に、探偵 蜜柑花子の活躍を描く。
・みずぎロジック
授業中に悠介が慕う姉 詩織里の水着が盗まれた。名探偵だという噂のある転校生の 蜜柑花子に相談するが、彼女は探偵として前面に出ることを拒む。そこで悠介は自分が調査の前面に立ちながら、蜜柑の推理を聞くという手段を取る。
・人体バニッシュ
生活指導の教師五唐が、校庭でタバコを吸っている生徒の室を見つけ追いかけるが、室は校舎の裏に回り込んだ後に忽然と消えてしまう。室はその日登校していなかったと主張し冤罪だと訴える。
その先生は、喫煙した生徒の向出を処分しインターハイの出場機会を奪うなど、指導の厳しさで生徒から疎まれていた。室の冤罪事件で五唐は厳しい休職に追い込まれる。五唐から依頼を受けた蜜柑は悠介と一緒に調査に当たる。
・卒業間際のセンチメンタル
詩織里のクラスで卒業制作として準備していた写真と木星のフレームが壊されていた。現場となった技術室に出入りしたのは3人。蜜柑と悠介は3年生のクラスのロッカーに隠れ状況を探る。
・ダイイングみたいなメッセージ
詩織里が高校を卒業し東京の大学に行ったことで失意する悠介。偶然通りかかった詩織里や、友人の千賀千歳、千歳の彼氏である双紙たちの車に乗せてもらう。
双紙が妹を迎えに行くため小学校に寄ったが、そこで双紙と話し合いをしていた千歳が何者かに階段から突き落とされてしまう。
千歳は意識を失う寸前に 血で 「I」もしくは「1」とみえるメッセージを残していた。死んだわけではないのでダイイングみたいなメッセージ。
【感想・考察】
名探偵の証明ででてきた蜜柑花子が印象的だったので、彼女を主人公とした話を読みたいと思った。かつての経験から探偵として目立つことを避ける蜜柑だが、事件解決への強い意志を見せる。言葉が少ないので考えが飛躍しているように見えるのが、ミステリ的な解決のカタルシスに繋がっていて爽快だ。
【オススメ度】
★★★☆☆