サマータイムリバース
実に爽快な本格推理小説です!
冒頭は「そして誰もいなくなった」的な導入で、オカルト要素が入ってきて様子が変わるのですが、その後の流れは探偵役が論理を積み上げて推理していって、やっぱり「本格物」でした。
読み終わってからタイトルのダブルミーニングに気づき、そこでも改めて驚かされました。
【作者】
赤井五郎
【あらすじ・概要】
航たちは男女6人で山荘に訪れていた。何者かにより次々と殺されていく。最後の2人になったところで「自分は犯人ではない」ことを知っている航は、残ったもう一人が犯人だと確信し殺す。
殺された女子のうちの詩織に思いを寄せていた航は、彼女を生き返らせるため、かつて母からもらった「願い事を一つだけ叶える権利」を行使する。
召喚された悪魔は「一人だけを生き返らせることはできない、条件を絞って実行する必要がある」という。そこで航は「この山荘で昨日の14時以降に死んだ5人を生き返らせたい」と願う。
被害者たちは順番に蘇ったが、徐々に不自然な部分に気づいていく。
【感想・考察】
虫の力で生き返るとか、時計塔から飛び降りると願いが叶うとか、非現実的な設定であっても、条件が開示され内部で整合が取れていていれば、「論理パズル」としての推理小説は十分成り立つということを改めて感じた。
薬の力で小学生になったり、肉親でも気づかないくらいの変装がある世界なのに、容疑者の目撃証言が鍵になるような推理マンガも、「お約束」が周知されている前提で広く受け入れられているので、当然の話かもしれないが。
リアルを追求する方向でないなら、論理パズルを深める設定を SF的、オカルト的に組み込んでくるのは面白い。
こういう作品をもっと読みたいと思う。
【オススメ度】
★★★★☆