毎日一冊! Kennie の読書日記

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不連続殺人事件

 1947年と終戦直後のだいぶ古いミステリなのですが、登場人物やストーリーに古さを感じません。物理的なトリックを弄する話よりも、犯人と探偵の心理的な争いを描く作品の方が風化しにくいのかもしれません。

 

【作者】

 坂口安吾

 

【あらすじ・概要】

 資産家である詩人の歌川一馬の家に「母親の歌川梶子は他殺だった」という手紙が届き、その一周忌に何かが起こることを示唆していた。

 一馬は友人の小説家 八代寸兵と、その妻である京子にも歌川家を訪れるよう依頼した。歌川家には、一馬が実際に招いた友人たちの他にも、多くの人が偽造された招待状で呼び出されていた。

 粗暴で嫌われ者だった作家の 望月王仁の刺殺を皮切りに連続殺人事件が幕をあける。

 寸兵の弟子である巨瀬にも偽造招待状が届き同席していたが、彼は探偵として極めて優秀で、事件の謎を解いていく。

 

 登場人物が多く人間関係が複雑だったので、整理しておきます。

 

矢代寸兵 :語り手の小説家。

矢代京子 :寸兵の妻。歌川多門のかつての妾で、寸兵との結婚時に揉める。

巨瀬博士 :寸兵の弟子だが、文学に才能はなく探偵として優秀。

歌川一馬 :寸兵の友人の詩人。

歌川あやか:一馬の妻。以前 画家の土居光一と同棲していた。

歌川多聞 :一馬の父。好色で正妻のほか多数の妾を抱えていた。

歌川梶子 :多聞の妻。前年に亡くなり、自殺と処理されている。

歌川珠緒 :一馬の妹。

望月王仁 :売れっ子作家だが、傲慢で嫌われていた。

丹後弓彦 :あまり売れていない作家。

内海明  :セムシの詩人。

土居光一 :商売のうまい画家。かつてはあやかと同棲していた。

三宅木兵衛:フランス文学者。秋子の夫だが、実質的に離縁状態。

宇津木秋子:木兵衛の妻で一馬の元妻。女流作家。

人見小六 :劇作家。胡蝶の夫。

明石胡蝶 :女優。小六の妻だが。一馬に想いを寄せる。

加代子  :多聞の隠し子。血の繋がる兄だが一馬に想いを寄せる。

海老塚  :村の医者。

諸井琴路 :海老塚医院の看護婦。

お由良  :多聞の妹。

南雲一松 :お由良の夫。疎開してきている。

南雲千草 :お由良と一松の娘。醜女と描写される。

神山東洋 :多聞の秘書を務める。弁護士資格を持つ。

神山木曽乃:東洋の妻。多聞の元妾。

坪田テルヨ:元歌川家の女中で、多聞の元妾。

坪田平吉 :テルヨの夫。元歌川家の料理人。

下枝   :歌川家の女中。多聞の妾。

富岡八重 :歌川家の女中。多聞の妾。

 

平野雄高 :捜査部長。カングリ警部と呼ばれる。

荒広介  :刑事。八丁鼻と呼ばれる。

長畑千冬 :刑事。読ミスギと呼ばれる。

飯塚文子 :刑事。アタピンと呼ばれる。

 

【感想・考察】

 それぞれの殺人に密室偽装のような仕掛けがある訳ではなく、ほとんど誰にでも実行可能な状況となっている。それでも心理的なトリックの仕掛けで不可能犯であるように見える。探偵役の巨瀬もトリックを見破るのではなく、犯人の残した心理トリックの瑕疵から、全体像を暴いていく。

 ”不連続”殺人事件 となっているのは、犯人の本来の目的に沿った殺人と、動機の隠蔽のために行われた殺人、予定外の殺人が続いているため、連続して考えると実態が見えなくなるということだろう。

 坂口安吾という作者は底が知れない。ミステリ作品もきっちり面白く仕上げてくるし、登場人物たちの造形は素晴らしく印象的だ。

 ちょっと登場人物が多すぎて、関係把握に疲れる以外は素晴らしい作品だった。

 

【オススメ度】

 ★★★☆☆

 

 

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