ドッペルゲンガーを殺せ: ショートショート・短編集
切れのあるショートショートは 大好きです。短いと説明不足で分かりにくくなることもありますが、無駄が削がれて鮮烈な印象を残すこともあり、そういう作品に出会えると嬉しくなります。
【作者】
小河原正弘
【あらすじ・概要】
20編のショートショートと、中編の「マジック・ビデオ」を収めた作品集。特に印象に残った作品は以下の通り。
・「を」の悲劇
無駄な文字を減らそうという動きから「を」の廃止が決まる。日本語の美しさが損なわれるとして廃止に反対するコラムが秀逸。
・秘密の道具
完璧な密室から抜け出せたこと自体が「彼」による犯行であることの決定的な証拠となった。「彼」の使った脱出方法は、過去考案されてきた幾多の密室トリックを嘲笑うかのごとく完璧だった。
・ノンストップ・メール
ヤンデレ束縛彼女からの、怒涛のメール攻勢が本気で怖い。
・ひとりの男
「地球の環境保全」を至上命題とされたコンピュータは、環境に悪影響を与える人類を、一人の男を残して絶滅させた。男は自分一人が残された理由を尋ねるが、コンピュータは沈黙する。
・マジック・ビデオ
これだけは中編である程度のボリュームがある。
前半は忘年会の余興に呼んだマジシャンが披露する、ビデオを使ったマジックを3つ紹介する。後半では前半の話がミステリ作品だったことが明かされ、その種明かしをしていく。
【感想・考察】
ショートショートは切れ味の鋭いものもあったが玉石混交だった。
中編の「マジック・ビデオ」の構成は面白い。ミステリ小説の読み合わせという設定で、伏線の置き方やミスリードのさせ方を、作者がどのように意識しているのか理解できる。手品のネタを探る小粒なミステリだが、製作者の舞台裏を見せてもらったような気分だ。
【オススメ度】
★★★☆