Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

お前たちの中に鬼がいる

 映画「SAW」のような雰囲気です。
特別なルールがある空間で、疑心暗鬼になりながらお互いを利用し、時に信頼して協力し、密室からの脱出を図っていきます。
心理劇的な緊迫感と、世界の仕組みを解いていく面白さに引き込まれ、かなり長い話ですが一気に読んでしまいました。

 

【作者】

 梅原涼


【あらすじ・概要】

高校教師の須藤彰は、気づくと薄暗い部屋に座っていた。
自分がなぜここにいるのか、前後の記憶が全くない。
目の前の机には「お前たちの中に鬼がいる」というメッセージが掛かれていた。
部屋から出ると廊下には5つのドアが並んでいる。
5つの部屋にはそれぞれ手足を鎖で拘束された女性がいた。

須永は自分のポケットに入っていた鍵でドアを開けられることに気づき、
最初の部屋にいた女性の拘束を解こうとした。
ところが拘束を解いた女性に突如襲われ、首に噛みつかれ傷を負う。
疑心暗鬼になった須永は他の女性の拘束を解かず、様子を見ようとする。
するとある瞬間、須永は部屋の中で鎖に繋がれた状態に置かれる。

この空間では「リセット」と呼ばれる「配置換え」があり
5人が各部屋で鎖に繋がれた状態、一人は外で鍵を持った状態になる。
「リセット」は1時間ごと、もしくは建物外の森に足を踏み入れた時に発生する。
須永たちは何度かの「リセット」を繰り返し、残された情報からこの世界の仕組みを理解し始める。

「お前たちの中にいる鬼を殺すことが脱出の条件」だという情報を得て、
それぞれが相手を疑いながら、脱出する方法を探していく。


【感想・考察】
がっつりネタバレが入ります。

 

最初は、須永の利己的で暴力的な振る舞いで、読んでいて嫌な気分になる。
でも終盤にかけ各登場人物たちの内面が明かされると違う情景が見えてくる。

「お前たちの中に鬼がいる」というのが「お前たちの中の誰かが鬼だ」という意味ではなく、「お前たち一人一人の心の中に鬼がいる」のだと転換するところから、登場人物たちの行動が変わってくる。

 

最後に九津見はその後どうなったのかが気になる。

1993年時点では6人に対して6本の鍵があったが、2013年時点では5本の鍵で最初から足りていない。
足りないのは1993年時点の鍵が1本その世界に残されていたからだと仮定し、
「世界から出るときのリセットでは、どの鍵でも有効」だということが強調されていたことと合わせて考えると、九津見が1993年時点の鍵を発見できれば脱出できるのかもしれない。

ただそうすると、一人も脱出できなかったの2003年組の鍵はどうなったのか、という疑問も残る。

この世界の「中」で殺された1993年組の高沢と異なり、現実世界ですでに死んでいた(植物状態?)九津見には、最初から脱出する選択肢はなかったのだろうか。
九津見が戻るためには、先に現実世界のわだかまりを解くことが必要で、だからこそ最後に須永が九津見の名前を呼んだのかもしれない。

 

【オススメ度】
 ★★★☆☆