少年の改良
ロックミュージシャンを目指す少年に、ロックの惨めさや欺瞞を教え、諦めさせようとする男の話です。ロックを諦めさせようとする彼の思考が、どうみても完全にロックなのが面白いです。
【作者】
町田康
【あらすじ・概要】
主人公の男の元に、従姉妹の娘が突然訪れ「息子がロックに傾倒しているのを何とかして欲しい」と頼んでくる。
男は寂れたライブハウスに少年を連れていき、ロックミュージシャンの現実を見せようとする。いくつかの演奏を聴き、ロックの欺瞞を受け入れる。
少年はロック熱が冷め、醜女の写真を撮ることに情熱を傾けるようになる。
【感想・考察】
実に「ロック」な作品だと思う。
「僕らは自由であるはずだ。でも僕らは本来性に反した軛をかけられている。例えば国家や道徳やが軛だ。ロックは『お前は自由を奪われている』と伝え、そのビートで軛を外していく」
「でも現実のロックは偽物だ。嘘だと分かっていて保身のために嘘をつく贋作は許せるが、自分の快楽のために若者をたぶらかす偽物は許せない」
これは作者のロック観で、現実のロックミュージックへの思いなのだろう。文章でロックを創ろうとしている自分への皮肉な目線にロックを感じる。
【オススメ度】
★★