the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
GAFAと呼ばれる4社(Google、Amazon、Facebook、Apple)についての本です。この4社を現代の四騎士とみなし、各社が急成長してきた理由や今後の見通しを分析しています。
近年、圧倒的な影響力を持ち始めているGAFAについて基本的な知識を持つには、本書のように簡潔にまとめられた本は役に立ちそうです。
どちらかというと批判的な立場で、恣意的な情報や偏った見方も多いのですが、見通しを語るストーリーは興味深く面白いです。
【作者】
スコット・ギャロウェイ
【あらすじ・概要】
まずは4騎士が急成長した要因と及ぼした影響を各社ごとに説明する。
・Amazon
「できるだけ多くのものを、できるだけ楽に収集したい」という人間の本能に根差し、小売業界を大きく変動させた。
アマゾンの急成長に対し、アメリカ小売業全体では成長していないゼロサムゲームとなっている。アマゾン以外のほとんどの小売業が減速している。
アマゾンは目先の利益ではなく「ストーリー」を語ることで巨額投資を魅力的に見せ、赤字が続く状況でも資本を集めている。こうした資本調達コストの低さは他小売業に対する優位性につながっている。
中でもロボット等による省人化に多額の投資を行っており、短期的に見ても米国だけで数万人の雇用が失われている。
・Apple
スティーブ・ジョブズというカリスマを核に「セクシーな高級品」という位置づけを取り、浮沈の激しい「テクノロジー企業」の競争から抜け出したと見ている。
他メーカと比べて価格差ほどの性能差がない iPhoneが受け入れられているのは、Apple製品の「クールさ」が Apple信者に受け入れられているからだとする。
ジョブズがとった戦略の中でも重要なのは、eコマースが主流となる時代に、敢えて「超クールな」Apple Storeという実店舗を持ったことにあるとする。技術的な参入障壁はいつか超えられるが、アナログな堀の深さはなかなか超えられない。
繋がることは人を幸せにする。人間関係を拡張するソーシャルネットワーキングは急速に拡大した。
マーケティングの観点からは、個人レベルまで分析されたデータには大きな価値があり、従来のメディアマーケティングを一変させている。
一方で「ソーシャルメディアは情報を発信するための道具」と自己定義し、発信する情報自体の真偽や価値判断には責任を負わず、ただ公平な器であるという。
実際には情報を取捨選択するAIにも人間とは違う形で偏りはある。クリックを稼ぐことに重み付けすれば、極端な意見の方が好まれる。結果、大多数の穏健派を極端な方向に分断する動きが生じている。
人は知識を求め続け、知識と庇護を与えてくれる神に祈り続けた。Googleは一瞬で誰に対しても答えを返してくれる、新たな神となりうる。
Googleは、純粋なアルゴリズムで判断されたオーガニック検索と、対価を得ている広告を明確に区別したり、トップページには広告を置かない等の施策を取っている。利用者はGoogleの検索結果は公正であると感じており、この「信頼」が大きな価値となっている。
ニューヨークタイムズなどのメディアは、検索流入で自社サイトへの誘導があると考えGoogleと協調的な戦略を取ったが、結果的には中抜きにされ競争力を奪われていると分析する。
これらGAFAの四騎士が共通に持つ「覇権への遺伝子」として
・商品の差別化
・ビジョンへの投資
・世界展開
・好感度
・垂直統合
・AIの活用
・キャリアの箔付けとなる
・地の利
をあげている。
また、GAFAに続く5番目の騎士の候補として、
アリババ、Tesla、Uber、Wolmart、Microsoft、Airbnb、IBM、通信キャリア各社などを上げ、各社を分析している。
GAFAが支配し始めたこの世界は「ビリオネアになるのはかつてないほど簡単だが、ミリオネアになるのはかつてないほど難しい時代」という。少数の支配者と多数の農奴がいる世界でよりよく生きるには何をすべきか、いくつか条件を上げている。いくつかの例を挙げると、
・大学には行っておけ、
・チャンスは都市に集まる
・何かを成し遂げた経験は貴重だ
・好きなことではなく特異なことで生きろ
等。
【感想・考察】
アマゾンのジェフ・ベゾスがベーシックインカム的な施策について言及しているのが面白い。
著者の言うように世界の富は集中する傾向にあるは間違いない。
とはいえ、世界の99%の富を、1%の人が独占することは可能でも、1%の人が99%の実体的キャッシュフローを生み出すことはできない。経済の血液を流すためには中流以下のボリュームゾーンが不可欠なのだと思う。
十分な資力があるなら、投資対効果が逓増していくロボットの方が人間よりも望ましいだろう。しかし雇用を破壊し、お金の流れを止めてしまえば、経済を殺してしまう。
「全人類が必要とする以上の富を、AI やロボットが生み出すことが可能だ」という前提に立つならば「働かなくても生活はできる」という選択肢があってもいいのかもしれない。
人間の生産に依存しながら人間の動機づけを軽視した社会主義的施策とは、異なる結果になると思う。一方で人間が「富という交換価値」以外に、どういう動機付けで活動できるのかという不安もあるが。
【オススメ度】
★★